更新日:2021/06/04
がんで不安なあなたに読んでほしい。がん専門精神科医との命の対話
がんと診断されたとき、個人差はあれど不安に感じる人がほとんどです。がんの治療は生きるためにするものですが、不安に押し潰されてしまうと生きる希望も失いやすくなり、何のために治療を受けるのかわからなくなってしまいます。本書は、がん研究会有明病院で腫瘍精神科部長を務めている清水研先生が、実際の患者さんとの対話をもとにしたものであり、「自分らしく生きること」へのヒントが見つかるものとなっています。
アドバイスだけで気持ちが楽になる
本書の「はじめに」には、次のようなことが書かれています。
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がんという病気は人生を脅かしかねない性質を持ちますので、身体だけでなく心にも大きな苦痛をもたらします。心の苦痛はご本人やご家族に大きな影響を与え、生活の質を下げてしましますから、心をきちんとケアすることがとても大切です。
身体の苦痛については医師に相談することが一般的だと思いますが、心の悩みについては「自分で解決しなければならない」と思われがちです。
(中略)そんなときに私の外来に来られて、いくつかアドバイスをさせていただくだけで、「気持ちが軽くなった」とおっしゃる方もたくさんいらっしゃいました。
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心の悩みは、人によって様々です。「がんと診断されたけど何をすればいいのか、誰にどれくらい伝えたらいいのか」、「主治医を変えたい」、「治療がうまくいっている人がうらやましい」、「治療が終わったけど再発が怖い」「患者会に参加したいけど、どんな雰囲気なのか不安」など、診断直後と治療後でもまた変わってきます。
清水先生は、がん専門の精神科医、心療内科医である「精神腫瘍医」として、このような相談に答えてきました。患者さんの今までの人生を肯定しつつ、治療やこれからの人生に希望を見出せるようなアドバイスを心掛けているようです。
過去を肯定して未来に目を向ける
本書に書かれている、具体的な相談事を紹介します。
30歳で肺がんとなり、「自分の何がいけなかったのか」と、自分を責めてしまう方がいました。まず清水先生は、「あなたにとってこの現実は不可解だし、納得がいきませんよね」と寄り添った上で、しかし「過去の過ちを振り返ったとしても、そこに答えはありません」と述べます。そして、過去の自分のがんばりを否定せず、「これからの人生をどう生きようか?」と向き合ってみてはいかがでしょうか、と問いかけます。
もちろん、現実を受け入れるのに時間はかかりますが、どう受け入れていけばいいのか、先を示してくれることは、患者さんにとって希望になるはずです。
アドバイスは、精神的なものだけではありません。常に不安を感じている患者さんに対しては日記を書くように提案し、どのようなときに不安を感じ、どのようなときに不安を忘れられるのかメモすることで、不安になりやすい行動を回避できるようにする、というアドバイスもあります。これは「行動活性化療法」という方法で、具体的な方法は本書に書かれています。
本書を読んで、「自分も相談したいけど、どこに行けばいいのだろう」と思う患者さんもいるかもしれません。相談先はいくつかありますが、本書では日本サイコオンコロジー学会とがん相談支援センターが紹介されています。
日本サイコオンコロジー学会のウェブサイトには、学会登録医のリストが公表されています。近所に登録医がいる病院があれば、そちらに問い合わせてみましょう。
もう一つのがん相談支援センターは、がん診療連携拠点病院に設置されている相談先であり、その地域で対応できる窓口を探して紹介してもらえます。
がんで不安な患者さんだけでなく、そのご家族にも読んでいただきたい本です。
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