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更新日:2021/06/04

女性のがん 心のケア(Tsuchiya Healthy Books 名医の診察室)

『女性のがん 心のケア(Tsuchiya Healthy Books 名医の診察室)』書評

著者名:大西秀樹(埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 教授)
出版社:つちや書店
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この本はタイトルにもあるように女性のがん患者さんのために書かれたものです。著者は埼玉医科大学国際医療センターで精神腫瘍科を担当する大西秀樹医師。

がんと診断されるとそれだけでいろいろな不安がよぎります。女性の場合は仕事以外にも家のことや家族のことなど心配事が絶えません。そんな女性の悩みに共に向き合い心に寄り添っているのが大西医師です。本著には大西医師が実際に担当した患者さんとの心温まるエピソードも紹介されています。がんと診断されても自分らしく生きるためのエッセンスが詰まった一冊です。

見逃されてきた心のケア

大西先生によると、がん患者さんの心のケアが注目されるようになったのはここ十年程のことだといいます。それまでがん患者さんは心身ともに苦しい状況のなか治療を受けることも少なくなかったとのこと。

同著によると、1983年にアメリカで行われた調査では、がん患者さんの約半数に適応障害やうつなどの症状がみられ、更なる調査では多くの方が潜在的に心の負担で苦しんでいることが認識されるようになりました。そして、治療効果を高めるためには患者さんの悩みを軽減することが重要であることが指摘され、心のケアが見直されるようになったそうです。

サイコオンコロジー科とは

がんになると「どうして私が?」「もしかすると死ぬのかも」といった、不安が募ってしまう患者さんは少なくありません。大西先生によると、中にはうつ症状などが深刻化して体調をくずしてしまう人もいるとのこと。食欲がなくなったり、眠れなくなったり、閉じこもったり、症状はさまざまですが、そんな患者さんの過度の落ち込みを解消し治療をうけられるように調整を行うのが精神腫瘍科です。

がんの告知を受けた患者さんの多くは同じような経緯をたどることが知られています。まず、第1段階で起こる変化が現実への否定、つまり絶望の時期です。次は抑うつ状態など心の変化に気づく時期。そしてようやく最後に立ち直りの時期を迎えるのだといいます。ここでいう「立ち直り」とは、がんになって心がくだかれた後に再度自分の意思で歩みはじめるようになることだと大西医師は著書の中で説明しています。

精神腫瘍科はがん患者さんと繰り返し気持ちを共有する場でもあります。抱えている心の悩みを聞いて共感を示すことで、がん患者さんは安心感を得ることができるのだといいます。つまり、がんが心におよぼす影響と心ががんに与える影響について医学的に診ていく治療のひとつが精神腫瘍科なのだそうです。

がんが女性に及ぼす影響について

がんになると患者さんはさまざまな喪失感を経験します。女性の場合、乳がんであれば乳房切除による喪失感、子宮がんや卵巣がんであれば将来の妊娠への不安など、女性特有の悩みも出てきます。それ以外にも健康を失うことで、趣味や生き甲斐、仕事や人間関係まで失うこともあると大西医師はいいます。

精神腫瘍科では心の喪失感を感じている女性たちの悩みに向き合い解決の糸口を探します。心の喪失感を埋めていくのに重要となるのが、がん患者さん自身の語りだと大西医師はいいます。語ることは真正面から問題解決と向き合う第一歩となり、ここに大きな力が秘められているのだそうです。

「身体に自然治癒力があるように、心にも治癒能力が備わっていています。語ることと聴くことは回復への扉です」と大西医師は指摘します。

さまざまな人生のエピソード

本著には大西医師が出会った患者さんたちとのエピソードが紹介されています。その中で印象に残ったのが高齢のご夫婦のお話です。認知症を患った奥様の診察に毎回付き添って来られるご主人。大西医師のことはもちろんのこと、ご主人のこともわからなくなってしまった奥様のことで心を痛めて大西医師に相談します。大西医師の提案によって起こるその後の展開は心温まる内容です。

がんと診断されるとそれまでとはまた違った人生がはじまります。いままで見えなかったものが見えるかも知れません。患者さん本人やご家族、そしてそれ以外の方にもお勧めです。

執筆者 美奈川由紀 看護師・メディカルライター

国立療養所南福岡病院(現・国立病院機構福岡病院)附属看護学校卒業。看護師
看護師の経験を活かし、医療記事を中心に執筆
西日本新聞、週刊朝日、がんナビ、時事メディカルなどに記事を執筆
著書に「マンモグラフィってなに?乳がんが気になるあなたへ」(日本評論社)がある

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