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更新日:2020/12/29

がん免疫療法の突破口【ブレイクスルー】

『がん免疫療法の突破口【ブレイクスルー】』書評

著者名:チャールズ・グレーバー
監修者:河本 宏
出版社:早川書房
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がんの治療法といえば、外科的に切除する手術、抗がん剤などを使ってがん細胞を殺す化学療法、放射線を当ててがん細胞を殺す放射線療法の3種類があります。最近、これらに加えて、免疫細胞のはたらきを利用してがん細胞を倒す「免疫療法」が登場してきました。2018年には、免疫療法の薬の開発に大きく貢献したジェームズ・アリソン教授と本庶佑教授にノーベル生理学・医学賞が授与されました。本書は、免疫療法が登場するまでの100年以上にわたる研究者たちの群像劇ともいえる重厚なノンフィクションです。

細菌感染でがんが治る?

私たち人間の体には、ウイルスや細菌などの病原体を異物として認識し、攻撃して排除する「免疫」のしくみが備わっています。がん細胞も異物なので、免疫の攻撃対象になるはずなのですが、そうならずにがん細胞は増え続けます。

かつては、「がん細胞はもともと自分の細胞だったので、免疫は異物と認識できない」と、ほとんどの研究者は考えていました。しかし19世紀末、アメリカの外科医ウィリアム・コーリーは奇妙な現象を目の当たりにします。化膿レンサ球菌という細菌に感染した患者で、腫瘍が消えてなくなったというものでした。そしてコーリー医師は、「細菌を人為的に感染させることでがんを治せるのではないか」という発想に至ります。細菌に感染することで免疫が刺激される、と彼は考えたのです。

最終的には細菌ではなく、細菌から抽出した毒素を注射することを40年間で1000人近くのがん患者に施し、半数の患者でがんが治ったとのことです。今から考えると過激な方法ですが、初めて免疫に注目したがん治療と考えられています。

100年後のブレイクスルー

20世紀後半になると、免疫には多くの細胞が関わっていることが明らかになっていきます。そして、「がん細胞はもともと自分の細胞だったので、免疫は異物と認識できない」のではなく、「がん細胞は免疫細胞のはたらきにブレーキをかけているため、免疫細胞はがん細胞を攻撃しないようにしている」ということがわかります。

1995年、アリソン教授たちは免疫細胞の一つである「制御性T細胞」の表面に「CTLA-4」という分子があることを発見し、翌年にはCTLA-4が機能しないようにする物質を投与するとマウスでがんが小さくなることを明らかにしました。CTLA-4は、本来は自分の細胞を認識して攻撃しないようにする「チェックポイント」の役割があるのですが、がん細胞はCTLA-4にはたらきかけて「自分を攻撃しないように」と、制御性T細胞にブレーキをかけているのです。

そこで、CTLA-4に「キャップをかける」ような薬があれば、がん細胞は制御性T細胞にブレーキをかけることができず、がん細胞は攻撃されるようになります。そうして開発された薬が「イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)」です。本書では、イピリムマブの開発こそが書名となっている「がん免疫療法のブレイクスルー」と書いています。

オプジーボの誕生

さて、日本で免疫療法といえば、本庶教授が開発に大きく貢献した「ニボルマブ(商品名:オプジーボ)」でしょう。オプジーボは、制御性T細胞とは別の免疫細胞「キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)」にある「PD-1」という分子にはたらきかけ、がん細胞によるブレーキができないようにして、がん細胞を攻撃できるようにする薬です。現在、ヤーボイとオプジーボは免疫療法の中でも「免疫チェックポイント阻害療法」とよばれています。

本庶教授のエピソードについては、アメリカで出版された本のためか、あまりページ数は割かれていません。もし興味があるなら、『がん免疫療法の誕生 科学者25人の物語』(メディカル・サイエンス。インターナショナル)に人柄も含まれ書かれているので、読んでみることをおすすめします(アリソン教授も載っています)。

本書では、アリソン教授や本庶教授だけでなく、臨床試験に関わった医師や患者の証言も豊富に書かれています。がん免疫療法は、ごく一部の天才だけで実現できたものではなく、長年にわたって多くの人の地道な努力が積み重なって、ようやく最近になって誕生したものであることを実感させられます。最後には、新たな免疫療法である「CAR-T療法」の紹介もあります。知的興奮を覚えることができる、内容の濃い本です。

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