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更新日:2018/10/06

国立がん研究センターの胃がんの本

『国立がん研究センターの胃がんの本』書評

監修:片井 均、朴 成和 出版社:小学館クリエイティブ
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国立がん研究センターによる、がんの種類別に解説する本が2018年6月に5冊同時に発売されました。「胃がん」、「大腸がん」、「乳がん」、「肺がん」、「肝・胆・膵がん」の5冊がありますが、今回は胃がんがテーマの本を紹介します。

罹患率1位の胃がん

日本人がかかるがんのうち、約15%は胃がんであり、罹患率は1位です。胃がんといえばヘリコバクター・ピロリ菌が関係している印象があるかもしれません。確かに、ピロリ菌感染者は、感染していない人より胃がんにかかるリスクが5倍になるという研究成果があるとのこと。しかし、ピロリ菌に感染しているからといって全員が胃がんにかかるわけではなく、感染者のうち胃がんにかかる人は1%未満といわれているそうです。

つまり、ピロリ菌に感染しているかどうかに関係なく、定期的に検診を受け、早期発見と早期治療に努めることが大切になります。最近のX線検査や内視鏡検査は精度が上がっており、胃の粘膜層や粘膜下層にできる早期胃がんは見つかりやすくなっています。早期胃がんであれば、治癒率は90%を超えます。

本書では第1章を「胃がんが疑われたら」と題して、検診から精密検査、診断までの流れ、それぞれで行われる検査の種類や特徴が書かれています。また、胃がんと間違えやすい胃炎や胃潰瘍についても解説されています。いずれの病気も、胃もたれや胃の不快感といった症状が早期胃がんと似ているため、自分で判断せずに病院を受診してほしいということです。
第2章は「胃がんの治療」として、手術を始めとするさまざまな治療法が紹介されています。がんが胃の粘膜内にとどまっている場合、内視鏡を使ったEMRまたはESDと呼ばれる手術でがんを切除できます。内視鏡で手術できないほどの大きさのがんの場合には胃を切除する方法となり、縮小手術、定型手術、拡大手術の3種類に分けられます。本書ではそれぞれの特徴を、イラストを交えながらわかりやすく解説しています。

胃がんでは、手術以外にも化学療法(抗がん剤療法)が行われることがあります。抗がん剤の種類や特徴はもちろんのこと、副作用の種類や対策も書かれています。抗がん剤療法では副作用が起きがちですが、事前に知っておくことで心構えができ、落ち着いて対処できそうです。

また、大まかにですが治療にかかる費用も紹介されています。高額療養費制度などの公的なサポートについても触れていますので、経済面の不安についても心強い内容となっています。

手術後の心構え

第3章の「胃がん手術後の生活」では、手術後に注意することが書かれています。胃切除の手術後では、呼吸がしづらくなり、痰を出しにくくなるため、手術前から痰を出す練習をする必要があるとのことです。他にも、手術後に起きやすい障害と対策がまとめられています。

第4章の「胃がんの再発・転移」では、胃がんの再発や転移に関する情報がまとめられています。胃がんの手術後5年間は定期検査を必ず受けるなど、注意して過ごしてほしいと呼びかけています。また、再発した場合の流れについて書かれています。

最後の第5章では、他のがんにも共通することですが、「心のケアと療養のこと」について解説しています。がんは手術したら終わりではなく、長い戦いとなります。ときには精神的に不安定な状態になってしまうかもしれませんが、周りの人たちとの付き合い方も含めて知っておきたいことが書かれています。

「もしかしたら胃がんかもしれない」と心配になっている人から、手術を控えている人、手術が終わった人も含めて、多くの人に読んでもらいたい一冊です。

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