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更新日:2017/09/05

直腸がん術後の吻合部の減圧をはかる新型ドレーンを開発

国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)、東病院は、2014年より臨床に基づいた医療機器開発を試行し、2017年5月に開設した『NEXT医療機器開発センター』で本格的に始動した。大腸外科長伊藤雅昭、西澤祐吏と開発開始当時、東病院の研修医で現・神鋼記念病院大腸骨盤外科の錦織英知、村中医療器株式会社、株式会社産学連携研究所らの産官学共同研究グループは、直腸がんの肛門温存術後において使用されることの多い新型のドレーンを開発した。

直腸がんにおいては、患部周辺組織の肛門部まで切除することになるのだが、これは術後の患者の生活の質(QOL)を下げることから、近年では低位前方切除術等の手術で肛門を温存することが多くなってきた。しかし、術後合併症として吻合部から腸液が漏れる縫合不全が発症することがある。術後に吻合部が治癒するまでの間に、直腸内に溜まるガスや便により腸管内圧が高まることが縫合不全の一因とされ、術後の縫合不全を防ぐため、ドレーンを経肛門的に留置する手技が多く行われているが、使用するドレーンによる腸管せん孔などの不具合を起こす可能性があり、この方法を広めるにあたり懸念される事項である。この問題を解消するため、伊藤雅昭を代表とする産官学連携研究グループによる、「次世代療機器開発会議『NEXT』」において、新しいドレーンの研究開発が行われた。

今回の共同研究で開発された新型のドレーンは、術後の腸管減圧に特化した経肛門ドレーンであり、ドレーン留置に伴って起こる不具合を少なくする構造になっており、ドレナージ効率の良い機構になっているという。縫合不全や腸管せん孔などの合併症を減らせる可能性があり、この開発により、患者さんの生活の質を高めるだけでなく、直腸がん手術の治療成績改善につながる可能性があるため、臨床の現場からの期待が大きい。

今回考案された新型ドレーンは、機能・構造について特許を取得し、腸管内減圧を目的としたクラスⅡ医療機器である腸管用チューブとして認証された。既存のイレウスチューブの要件を満たす後発医療機器として開発されたこの腸管用チューブに関しては、肛門温存手術において腸管減圧効果や縫合不全予防を評価する目的で、「直腸癌術後縫合不全予防における経肛門ドレーン (WING DRAIN)の安全性・有用性に関する第Ⅱ相試験(WING DRAIN STUDY) UMIN: 00027455」が多施設医師主導臨床試験として実施されているという。
(Medister 2017年9月5日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 直腸がん術後の吻合部の減圧をはかる新型ドレーンを開発 産官学連携による開発・上市・評価のモデルケース

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