更新日:2017/06/05
国立がん研究センター、世界保健機関(WHO)/国際がん研究機関(IARC)によりがん登録に関する国際協力事業のコラボレーティングセンターに指定
国立研究開発法人国立がん研究センターは、世界保健機関(WHO)のがん専門研究機関である国際がん研究機関(IARC)が世界的ながん登録の推進のために新たに設置したコラボレーティングセンターに2017年5月19日、世界で初めて指定を受けた。
国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)は、世界保健機関(WHO)の外部組織であり、1965年、WHO総会で、発がんのメカニズム、疫学、予防等の研究する組織として設立が決められた。現在の活動としては、発がんメカニズムの解明や原因の特定による発がん頻度の抑制、という目的を果たすべく、化学物質、放射線やウイルスなどの人に対する発がんの強さを評価、公表している。このほかヒトの各臓器に発生する腫瘍を組織学的に分類し記載した「WHO分類シリーズ」(The WHO Classification of Tumours series, いわゆる “Blue Books”)を出版している。
また、IARCは、がんの罹患数等が多いにもかかわらず、実態把握が遅れている地域において、がん登録の立ち上げと推進の支援を行うため、2011年11月よりがん登録に関する国際協力事業Global Initiative for Cancer Registry Development計画(以下「GICR計画」)を実施している。GICR計画では、世界6カ所に地域の活動拠点となるハブセンターを設置し、現地調査や研修などの活動を行ってきた。アジア地域では、現在までにトルコ(イズミール)とインド(ムンバイ)の2カ所にハブセンターが設置されているが、東南アジア及び東アジアを支援することは難しい状況にあるのが現状である。今回、ハブセンターの活動を支援するコラボレーティングセンターに日本の国立がん研究センターが指定されたことにより、アジア地域での活動をはじめとする国際活動がより一層活発になり、世界のがん対策に貢献することが期待される。
国立がん研究センターは、本指定により、WHO/IARCや地域のハブセンターと協働し、がん登録やがん対策に関わる教材の作成や研修、人材交流の実施、現地でのがん登録事業の立ち上げとがん統計の整備などを推進していく方針である。こうした活動は、国立がん研究センターがん登録センターがん登録室長(企画戦略局国際戦略室併任)松田智大を中心としたチームがコラボレーティングセンターを組織し進めていくという。松田氏は、130を超える国・地域を代表する592地域により構成されるがん登録の専門家集団である国際がん登録協議会(IACR)の理事長に2016年8月に選出されており、様々な方面からWHOや国際的ながん登録の推進に貢献している。
全世界で新規にがんと診断される患者の46%はアジアで発生しており、肝がんや胃がんなどはアジア諸国での罹患が多く、国の枠を超えてがん対策に取り組む必要がある。この状況を鑑み、日本が長年培ってきたがん登録、がん統計、がん対策の知見を世界全体のがん対策に役立てることが今後も求められていくであろう。
(Medister 2017年6月5日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センター 国立がん研究センター、世界保健機関(WHO)/国際がん研究機関(IARC)によりがん登録に関する国際協力事業のコラボレーティングセンターに指定