更新日:2017/05/15
免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブで国内初の小児がん対象治験を医師主導で開始
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、小児期およびAYA(Adolescent and young adult, 思春期・若年成人)世代のがん患者のうち、標準的な治療に抵抗性の難治悪性固形腫瘍とホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)を対象に、免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブの医師主導治験(NCCH1606、試験略称:PENGUIN)を開始する。ニボルマブでの治験を小児期およびAYA世代を対象として行うことは国内初の試みである。
小児がんは、個々のがんが極めて希少な疾患であり、患者数が少ないなどの理由から、製薬企業による新薬の臨床試験(治験)がほとんど進まないことが課題とされてきた。そのため国立がん研究センターでは、成人向けの薬剤を小児まで適応拡大させるなどを目的とした小児がん対象の医師主導治験を積極的に実施している。
ニボルマブは、わが国を中心にシーズ探索、創薬、臨床開発まで行われてきた薬剤である。これまでに、ニボルマブは製薬企業の小野薬品工業株式会社およびブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社により、さまざまながん種を対象に臨床開発が進められてきている。
ニボルマブはその作用のメカニズムから、成人と同様に小児においても複数のがん種に効果が期待できるものと考え、今回の医師主導治験を計画した。本試験の対象は、2つ以上の化学療法で治療を行った後に腫瘍が残っている難治小児悪性固形腫瘍とホジキンリンパ腫である。
本試験は小野薬品工業株式会社から資金援助および薬剤提供を受け、医師主導治験として実施していく。そして、成人の複数のがん種において有効性が示され、承認が得られている免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブが小児においても安全に投与できるかを評価するための国内初の試験となる。本試験でニボルマブの小児における安全性が確認できた場合は、ニボルマブが有効と考えられるがんにおいて薬剤開発を進め、また、既に成人で承認が得られているホジキンリンパ腫に対する小児への適応拡大を目指す方針だという。
(Medister 2017年5月15日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センター 免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブで国内初の小児がん対象治験を医師主導で開始
小野薬品工業株式会社ホームページ