更新日:2017/10/31
子どもと一緒に知る 「がん」になるってどういうこと?
消化器系のがんや乳がん、子宮がん、卵巣がんは、40歳ごろから発症することが多いと言われています。この年代は、子育ての真っ最中という人もおり、自分ががんになったことを子どもにどう伝えようか、抗がん剤治療の副作用で苦しいときに子どもとどう接すればいいのか、がんの治療を受けているときの家族との関わり方に不安をもつ人は少なくありません。このような悩みについて、実際の物語に触れながら参考となるのが本書です。
実際にあった3つの物語が中心
本の中では、東京女子医科大学がんセンター長の林先生が実際に治療したがんの患者さんと、その家族の物語が3つ紹介されます。乳がんになった母親の話では、小学校6年生の娘がいるのですが、がんを娘に隠そうとする母親の心理が描かれています。また、大腸がんになった父親の話では、中学1年生の息子に静かな公園でがんになったことを告白するシーンや、抗がん剤治療の副作用で手のしびれに悩まされるようすが描かれています。末期の肺がんの祖母と高校1年生の孫の話では、抗がん剤治療と在宅医療のようすが描かれています。
3つの物語はいずれも、患者さん本人と、その子どもあるいは孫の視点が交互に書かれています。これにより、お互いがどのように考えているか、気持ちについてもよく知ることができます。がんの性質や治療に関するコラムも適宜挿入されていますが、メインは家族とのやり取りとなります。他のがん患者さんは家族とどう接していたのか、治療中に何を考えていたのか、そういったプライベートな部分での不安を和らげる読み物となっています。
子どもにも正しいがん教育を
本書は、林先生が小学校、中学校、高校で実施している「がん教育」の内容をまとめたものです。がん教育とは、子どもたちに、がんの性質だけでなく、早期発見と早期治療の重要性、がんは生活習慣で予防できるもの、がんになっても充実した生活を送ることができるということを、学校で伝えることです。
現代の日本は、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなります。言い換えれば、ありふれた病気なのです。ところが、がんに関する正しい知識や情報が不足しており、実際に患者さんや家族にがんを宣告したときに見るショックの大きさに驚くと言います。
その理由として、日本人の多くが病院で息を引き取ることが多くなり、「病」や「死」が日常から離れてしまったことで、がんが急に降りかかってきた災難であるかのように思われているからではないか、と林先生は考えています。がんに関する正しい知識を、大人は当然のことながら、子どものうちから身に付けてほしいと思うようになったそうです。
こう思う最大のきっかけとなったのは、ある大腸がんの患者さんと、その孫の幼稚園児との会話だったとのことです。抗がん剤治療の副作用で髪の毛が一気に抜けた祖母を見て、孫は「おばあちゃん、気持ち悪い!」と言ったそうです。もちろん、幼稚園児の孫にはがんや抗がん剤治療の副作用の知識はなく、当然の反応ではあるのですが、抗がん剤治療を受けた家族や友人がいる人の中には、心の中で同じような感想をもった人がいるのではないでしょうか。単に、がんは恐ろしい病気で副作用に苦しむものと思い込むのではなく、生活習慣で予防できるのであれば、今からでも子どもと一緒に考えていきたいものです。
本書は、文字が大きく、一部にはふりがなが振っているため、小学生高学年でも読めるようになっています。身近な人の中にがん患者がいる・いないにかかわらず、お子さんにも読んでいただきたい一冊です。
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