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更新日:2020/08/24

COVID-19ワクチン候補ペプチドの同定

国立研究開発法人国立がん研究センター(以下国立がん研究センター)とブライトパス・バイオ株式会社(以下ブライトパス)は、共同研究において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防ワクチンとなり得る複数の候補ペプチドを同定した。

COVID-19の世界的大流行は依然として収束する兆しが見えてきていない。国立がん研究センター先端医療開発センター中面哲也免疫療法開発分野長らとブライトパスは、がん細胞の遺伝子変異(ネオアンチゲン)に着目したがんワクチンの臨床応用を目指す共同研究を進めている。さらにこのネオアンチゲン・ワクチン候補を同定する技術を応用し、COVID-19をもたらすウイルス(SARS-CoV-2)に対するペプチドワクチン候補を同定し、パンデミック収束の一翼を担えるCOVID-19ワクチンの開発を共同研究で進めてきた。

国立がん研究センターとブライトパスがこれまで開発してきたのは、がん細胞を殺傷するT細胞(細胞性免疫)の誘導を作用機序とするがんワクチンであり、この開発経験を活かし、ウイルスに対するT細胞を、ペプチドという短く絞り込まれた断片を用いてピンポイントで強力に誘導するワクチンの開発に取り組み、複数のワクチン候補ペプチドを同定するに至った。

T細胞がウイルス抗原(ウイルスのタンパク質から切り出される短いペプチド)に反応するためには、このペプチドがヒト主要組織適合性遺伝子複合体(HLA)と一緒に感染細胞の表面で提示されていなければならない。HLAは一人が複数の型をもち、その組み合わせは一人ひとりで大きく異なる。今回同定したペプチドは、HLA-A24とHLA-A2を合わせて日本人の85%をカバーするHLAに結合するため、日本人での有効性が期待される。さらに中和抗体の誘導を図るペプチドも含む製剤デザインがなされている。

本COVID-19ワクチンの設計は、これまでに登録されている約11,000株のSARS-CoV-2のゲノムデータを参照し、ウイルスがコードするタンパク質から切り出されると予測されるペプチドを、HLAへの結合能、細胞表面へHLA複合体として提示されるか等の観点から検討した。ネオアンチゲン・ワクチン設計に用いる予測アルゴリズムを用いたin silico解析によってリストアップし、HLA遺伝子導入マウスモデルで実際の免疫原性の有無を確認するスクリーニング法によって、絞り込みを行った。

本共同研究は、中面哲也免疫療法開発分野長らを中心にブライトパスとの間で進められている。中面分野長は、本邦におけるがん免疫療法のサイエンスを牽引するとともに、グリピカン3を始め、多くのがんペプチドワクチンの探索研究から臨床試験までを一貫して推進してきた。ブライトパスは、日本人で一番多いHLA-A24拘束性ペプチドワクチンを、前立腺がんを対象とするテーラーメイド型がんワクチンITK-1として国内で第3相臨床試験まで進めた経験を有し、現在は米国人で一番多いHLA-A2拘束性4種ペプチド・ミックス・ワクチンGRN-1201を、非小細胞肺がんを対象に米国で第2相臨床試験を進めている。

ペプチド製剤は、化学的な合成によって製造できることから、今後COVID-19ワクチンの普及に必須となる大量製造、安定した薬剤供給にも対応できる可能性がある。国立がん研究センターとブライトパスは、本共同研究の成果を第三者の開発パートナーやアカデミア、大学病院などとの協業も視野に入れ、臨床応用と早期実用化へと進める機会を探っていく方針である。
(Medister 2020年8月24日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース COVID-19ワクチン候補ペプチドの同定 細胞性免疫誘導を特徴とする画期的ワクチンの開発へ

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