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更新日:2020/05/11

最大規模の横断的がんゲノム解析による新規発がん機構の解明

国立研究開発法人国立がん研究センター分子腫瘍学分野 斎藤優樹任意研修生、古屋淳史主任研究員、片岡圭亮分野長らの研究グループは、京都大学大学院医学研究科 奥野恭史教授、東京大学医科学研究所 宮野悟教授らと共同で、これまで最大規模の症例数である6万例(150がん種以上)を超える大規模ながんゲノムデータについて、スーパーコンピューターを用いた遺伝子解析を行い、同一がん遺伝子内における複数変異が相乗的に機能するという新たな発がんメカニズムを解明した。

まず、がん遺伝子は従来単独で変異が生じることが多いと考えられてきたが、一部のがん遺伝子では複数の変異が生じやすいことが明らかになった。PIK3CA遺伝子・EGFR遺伝子など代表的ながん遺伝子では変異を持つ症例の約10%が同一遺伝子内に複数の変異を有しており、これらの大部分は染色体の同じ側(シス)に起きていた。同一がん遺伝子に複数変異が生じる場合、単独の変異では低頻度でしか認められない部位やアミノ酸変化がより多く選択されていた。これらの変異は単独では機能的に弱い変異であったが、複数生じることで相乗効果により強い発がん促進作用を示した。さらに、特にPIK3CA遺伝子で複数変異を持つ場合は、単独変異よりもより強い下流シグナルの活性化や当該遺伝子への依存度が認められ、特異的な阻害剤に対して感受性を示していた。

研究グループは、今までで最大規模の症例数を対象とした横断的がんゲノム解析により、発がんに関わる新たな遺伝学的メカニズムを明らかにしていた。本研究が示すように、大規模シーケンスデータを用いた遺伝子解析は、従来見逃されていた発がんメカニズムを明らかにする上で有用である。研究グループは今後も大規模シーケンスデータを用いた遺伝子解析を継続し、さらなる発がんメカニズムの解明を目指していくという。

また、今回明らかにされた「同一がん遺伝子内における複数変異」は分子標的薬の治療反応性を予測するバイオマーカーとして有用であると期待されるほか、単独では意義不明であった変異が生じる理由を説明できる可能性があり、がんゲノム診療に役立つことが期待される。本邦でもがんゲノム医療の開始に伴い、がんゲノムシーケンスデータや臨床情報が蓄積されている。これらを解析することで、更に同一がん遺伝子内における複数変異の意義を明らかにし、臨床に役立つ研究へ発展させる方針である。
(Medister 2020年5月11日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 最大規模の横断的がんゲノム解析による新規発がん機構の解明 ―がんゲノム医療への応用が期待―

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