更新日:2020/12/22
iPS細胞のがん化リスク どこまで抑制できるのか
そもそもiPS細胞は、未分化の細胞が残った状態で移植を行うと、がん化する可能性があると言われている。そのメカニズムは、大きく2つのことが考えられている。
・未分化なiPS細胞により、テラトーマと呼ばれる奇形腫(良性腫瘍)が形成される
・iPS細胞の作製・培養過程で、ゲノム異常が起こり、iPS細胞が腫瘍する
どちらのメカニズムに対しても、さまざまな研究が行われている。
今回の共同研究では、未分化のiPS細胞によるがん化を克服し、再生医療に対する品質管理の観点から、体細胞へ変化したiPS細胞の中から、効率的に残留iPS細胞を除去する技術の研究が行われていた。今回、着目したのはがん細胞とiPS細胞との共通点であった。がん組織は、ALAを取り込むと、プロトポルフィリンⅨという特殊な物質へと変化し、さらに特殊な波長の光照射を行うことで、細胞を破壊する物質を生成するという特徴がある。今回の共同研究では、この特徴的な性質をiPS細胞へ応用した。ALAを含んだ培養液でiPS細胞を培養し、体細胞へ変化した状態で特殊な条件下で光照射を行うことで、未分化のiPS細胞が死滅し、完全に除去することに成功したという。
SBIファーマはこれまでにも、ALAを有効成分とするアレルギー性鼻炎治療剤を開発し、独立行政法人国立病院機構と共同で特許を取得している。こちらも、ALA投与後に特殊な波長の光照射を行うことで、鼻粘膜炎症を抑制し、アレルギー性鼻炎を治療する技術。
SBIファーマとリプロセルは、本技術がiPS細胞の再生医療への応用に対する課題を克服する、極めて画期的な技術であるとしている。
(Medister 2015年6月9日 葛西みゆき)
<参考資料>
SBIファーマ、リプロセル
再生医療実現に向けた iPS 由来の分化細胞群からの残留 iPS 細胞の選択的除去技術の開発(SBI ファーマ株式会社 ALA 技術応用)に関するお知らせ
京都大学 iPS細胞研究所 iPS細胞基本情報
SBIファーマ 国立病院機構との共同出願によるALA を有効成分とするアレルギー性鼻炎治療剤の特許取得のお知らせ
《最新》動物細胞培養の手法と細胞死・増殖不良・細胞変異を防止する技術