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PI3K阻害薬の開発、各社で進行中 中外製薬が2つ目の臨床試験開始
更新日:2020/12/22
PI3K阻害薬の開発、各社で進行中 中外製薬が2つ目の臨床試験開始
中外製薬株式会社(本社 東京都中央区)は、PI3K阻害薬であるtaselisibの固形癌を対象とした国内フェーズⅠ試験を、9月から開始した。2014年第3四半期 連結決算資料の中で公表した(2014年10月24日公表)。 PI3Kは、細胞膜の構成成分であるイノシトールリン脂質をリン酸化する酵素である。この過程で産生されたPI3,4,5-三リン酸(PIP3)が、癌遺伝子の1つであるAktをリン酸化する。Aktはがん組織で活性化することから、Aktの生存促進作用が、細胞の癌化に関連していることが分かっている。PI3Kは、この経路を通じて受容体のシグナルを細胞内へ伝達し、癌細胞の増殖・浸潤、ならびに抗癌剤への耐性獲得に関係していると考えられている。 今回臨床試験を開始したtaselisib(RG7604/GDC-0032)は、PI3Kを強力かつ選択的に阻害する、新規の低分抗悪性腫瘍薬と位置付けられている。中外製薬により現在開発がすすめられているpictilisib(RG7321/GDC-0941)も同様にPI3Kを阻害する分子標的薬であるが、taselisib はpictilisibと比較し、PI3Kα変異型に対して強い阻害活性を示すという。 Pictilisibに対する国内フェーズⅠ臨床試験は、進行・再発非扁平上皮非小細胞肺癌患者が対象となり、カルボプラチン/パクリタキセル+ベバシズマブ療法との併用投与が予定されている(ステージ2)。一方で、今回taselisibに対する国内フェーズⅠ臨床試験は、ホルモン受容体陽性進行・再発乳癌患者が対象となり、フルベストラントとの併用投与が予定されている(ステージ2)。いずれの試験も、過去にPI3K阻害薬の投与を受けた患者は対象外となる。 PI3K-Akt経路は、卵巣癌・大腸癌・前立腺癌・神経膠芽腫・肺癌・乳癌など、複数の癌で活性化することが分かっている。PI3Kを標的とする分子標的薬は、各社で開発が進められ、いくつかの臨床試験が進行中である。他社の製剤では静脈内注射で投与するものもあるが、中外製薬が開発中の2剤は、いずれも経口投与が可能な製剤となる。いずれにしても新しい分子標的薬が抗悪性腫瘍薬の主流となる日もそう遠くはないであろう。 (Medister 2014年10月30日 葛西みゆき)
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