米国Verastem社によるCOMMAND試験において、日本からの患者登録が始まった。COMMAND試験とは、悪性中皮腫を対象とした焦点接着キナーゼ阻害薬=FAK阻害薬であるVS-6063(一般名defactinib)に国際共同第Ⅱ相試験である。defactinibが、アリムタ(ペメトレキセド)+シスプラチンまたはカルボプラチン(プラチナ)を含む第一選択療法を受けることで、悪性胸膜中皮腫患者に対する抗腫瘍効果を維持できるかどうかを解明するために行われる。
COMMAND試験における患者登録は、2つのタイムラインに分けられている。まずパート1では、ペメトレキセド+シスプラチンまたはカルボプラチン(プラチナ製剤)を含む第一選択療法での治療中に、マーリンというタンパク質が一定量あるかどうかのバイオマーカー試験を受ける。次のパート2では、先のバイマーカー試験の結果によりマーリンの値で低値と高値に層別化し、プラセボまたはdefactinib 400 mg 群にランダム化して治療効果の判定が行われる。パート1の第一選択療法終了後6週間以内に、パート2を開始することとなる。患者登録の条件は以下の通り。
・悪性胸膜中皮腫患者であること
・ペメトレキセド+シスプラチンまたはカルボプラチン(プラチナ製剤)の4サイクル以上から構成される化学療法を現在受けている患者(最近完了した症例も含む)
・悪性胸膜中皮腫の初期化学療法として、ペメトレキセド+プラチナ製剤の併用療法を受けたことがある患者
・その後のペメトレキセド+プラチナ製剤の併用療法によって病状が安定または改善している患者
悪性中皮腫は、胸腔または腹腔に出来る癌で、アスベスト曝露が主な発症要因とされる(発症までは25~50年かかる)。世界的には毎年6万近くの症例が報告されているという。Ⅰ期では手術療法も可能な症例があるが、Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ期では、放射線療法や化学療法が併用で行われることもある。日本国内での患者発生率が増加しているのも関わらず、未だ患者生存率は低い。今回のdefactinibは、新たな治療法としてその有効性が期待されている。
(Medister 2014年7月15日 葛西みゆき)
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