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国立がん研究センター DDS抗癌剤の創薬コンセプトを証明
更新日:2020/12/22
国立がん研究センター DDS抗癌剤の創薬コンセプトを証明
2013年11月6日、国立がん研究センターは「質量顕微鏡で”癌に集まる抗癌剤”の薬剤分布が明らかになった」と発表した。この研究成果は、2013年10月25日付けで、英科学誌Nature姉妹誌である「Scientific Reports」誌に掲載されている。 国立がん研究センターは2011年より株式会社島津製作所と包括共同研究契約を締結しており、今回の研究は島津製作所のもつ質量顕微鏡を利用して行われた。ここで重要な役割を果たした質量顕微鏡とは、組織などに含まれる多くの分子質量を測定するだけではなく、数百におよぶ分子の分布をそれぞれ画像として一度に測定できるものである。ヒトの癌細胞を移植したマウスからDDS抗癌剤投与後の腫瘍組織を取り出して切片化し、マトリックスを塗布して腫瘍組織の各スポット別にレーザーを照射することで、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法により抗癌剤を識別した。さらに各組織スポットから抗癌剤データのみを2次元像として再構成し、腫瘍組織内の抗癌剤の分布を直接確認した。 今回使用された抗癌剤は、パクリタキセルとそのDDS(NK105)である。パクリタキセルは、卵巣癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、子宮体癌や一部の頭頸部癌および食道癌など、広く使用される抗癌剤である。細胞分裂に必要な微小管の生成を抑制し、結果的に癌細胞の増殖を抑える働きがある。今回の研究で通常のパクリタキセルとNK105を投与して薬剤分布を比較した結果、投与後1時間の段階ではNK105は正常組織にはほとんど移行せず、癌組織に特異的に集約していた。さらに経時的な観察を行った結果、投与後24時間、72時間でもNK105は癌組織に留まっていたが、通常のパクリタキセルは投与後24時間でほとんど確認されなかった。つまり、DDS抗癌剤は通常の抗癌剤よりも癌組織に特異的に長時間集約し、かつ正常細胞にはほとんど移行していないことが明らかとなった。これによりDDS抗癌剤の創薬コンセプトが証明されたことになり、今後の新薬開発に大きな一歩となった。 (Medister 2013年11月12日 葛西みゆき)
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