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更新日:2020/12/22

胃癌撲滅の一歩となるか ピロリ菌と胃癌の深い関係がまた1つ明らかに

EMpylori2015年4月23日、岡山大学は、同大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の有元佐賀惠准教授(医薬品安全性学)らの研究グループが、ピロリ菌成分が突然変異を引き起こすこと、他の発がん物質の変異原性を増強することを発見したと発表した。この研究結果は、3月24日付で、英国の科学誌「Mutagenesis」オンライン版で公開されている。

ピロリ菌感染と胃癌発症には強い相関関係があることが知られており、2012年からは日本でも「慢性胃炎に対するピロリ菌感染治療への保険適応」が始まっている。また、すべての癌細胞のDNAには、突然変異があることも知られており、胃上皮細胞変異と胃癌発症のメカニズムの解明が進むことで、突然変異を阻害する薬の開発や胃癌発症予防につながるのではないかと期待されている。

今回の研究は、前出の有元准教授のほか、岡山理科大学、京都府立医科大学、松下記念病院などによる共同研究となった。研究グループは、突然変異を高感度に検出する方法を用いた研究により「ピロリ菌成分を加えたネズミチフス菌」および「ヒト由来の培養細胞」において突然変異が起こることを発見した。さらに、アルキル化剤系発癌物質とピロリ菌成分との両方を加えると、アルキル化剤系発癌物質を単体で加えた場合より、多くの突然変異が起こることから、ピロリ菌成分がアルキル化剤系発癌物質の変異原性を増強することが分かった。なお、この反応について同じく消化管にいる大腸菌でも同実験を行った結果、突然変異を確認することはできなかったことから、ピロリ菌独特の成分によるものと考えられる。
さらに、ピロリ菌成分を100℃で加熱すると変異原性が低下したことから、ピロリ菌の持つ変異原性物質は、熱不安定な低分子化合物であり、菌体タンパクに付着して存在していると考えられた。

胃癌による死亡は減少傾向にあるとはいえ、いまだに日本の癌死亡率は第2位。今後、さらなる研究により「胃癌撲滅」の日が来ることを願っている。
(Medister 2015年5月1日 葛西みゆき)

<参考資料> 岡山大学 胃がんとピロリ菌:ピロリ菌成分は突然変異を引き起こす 厚生労働省 「ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについて」の一部改正について 胃がんは予防できます―ピロリ菌と胃がんの気になる関係パート〈2〉
胃がんは予防できます―ピロリ菌と胃がんの気になる関係パート〈2〉

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