更新日:2020/12/22
癌の“可能性”が民間でも分かる時代へ 民間による“解析の商業化”
日本における死因は、1980年代から現在まで癌死が第1位となっている。独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターにより2014年5月2日に更新された最新のがん統計データによると、男性の4人に1人、女性の6人に1人が癌で死亡していることになる。これまでも多くの研究により、新薬の開発や癌転移のメカニズムの解析などが行われてきたが、現在では癌に対する予防的な解析方法の開発も多く行われており、これを商業ベースに乗せる動きがいくつか現れている。
まず1つ目は、臨床アミノ酸研究会(熊本大学大学院内)が開発したAminoIndexR Cancer Screening(AICS)だ。これは体内のアミノ酸濃度バランスを解析することにより、胃癌・大腸癌・肺癌・前立腺癌・乳癌・子宮頸癌・子宮体癌・卵巣癌などのリスクスクリーニングを行う手法だ。検体としては5ml程度の血液を採取するのみであり、すでに全国800か所の医療機関等において検査を受けることができる(自費)。先に行われた研究では、早期の子宮体癌への感度は腫瘍マーカー(CA125)より高いとするデータが得られているという。
もう1つは、遺伝子の特徴からどの癌になりやすいかを解析する手法を、インターネット経由で受けることができるサービスの提供だ。これは株式会社エバージーン(本社:東京都新宿区)が提供するサービスで、被験者の唾液を検体とし、アフェメトリクス社(米国)の遺伝子解析システムDNAマクロアレイを使用する。2000年初めころからすでに日本でもいくつかのバイオサイエンス企業で採用しているシステムだが、エバージーンのサービスでは胃癌・肺癌・食道癌・大腸癌・腎癌・膀胱癌・前立腺癌・上咽頭癌への罹患の可能性を解析するという。
これらはいずれも“癌の可能性”が分かるだけだが、確率が高いという結果が出れば、生活習慣の改善や、健診による早期発見につながる可能性もある。確定診断には医療機関での検査が必要ではあるが、いずれは“癌は予防できる”時代が来るかもしれない。
(Medister 2014年5月7日 葛西みゆき)
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