更新日:2020/12/22
中国で水道水から高濃度ベンゼンを検出 肺癌に続く発癌性リスクとは
2014年4月12日、「中国の甘粛省蘭州市で、(2014年4月)11日までに、国の基準値を大幅に上回る発がん性物質のベンゼンが水道水から検出された」と報じられた。上水場内の水から10日午後、国の基準値である1リットル当たり10マイクログラムの約12倍のベンゼンが検出され、11日未明には約20倍に上昇、供給された水道水からは約8倍のベンゼンを検出した、というものだ。これにより、同地域の住民の間ではペットボトルの水を求めて店舗に押し掛けるなどの混乱が見られている。翌日には「国有大手『中国石油天然ガス集団』の油送管から原油が漏れ、老朽化した送水施設に混じったとみられている」と、原因も明確になったようだが、高濃度ベンゼンが水道水に混入した場合、どのよう影響があるのだろうか。
ベンゼンとはそもそも、染料・合成ゴム・合成洗剤・医薬品等の原料、あるいはそれらの溶剤として広く使用されている、揮発性のある無色の液体だ。しかしその処理を間違えば、重要な地下水汚染物質となる。人体への影響としては、急性では腹痛、咽頭痛、嘔吐などの症状があるが、やがて中枢神経の損傷や骨髄損傷を招き、発癌性を持つことが分かっている。これは、ベンゼンがヒトの体内でベンゼントリオールに代謝されることにより、DNA鎖を切断するためと考えられているIARCによる「発癌性リスクのある物質」でもグループ1に分類されており、骨髄性白血病との因果関係が認められている。
中国の環境汚染は深刻だ。2013年10月にも、WHOは中国を中心としたPM2.5による環境汚染が肺癌リスクとなることを認めており、外出の際には防塵マスクが必要との見解が出されるほどだ。また、今年2月にも中国環境保護省では「中国の川や地下水などへの汚染物質の排出量が環境の許容量をはるかに超えており、深刻な水質汚染が収まっていない」との見方を示しばかりだ。それに続く今回の騒動。中国政府の動向には、世界中からも注目が集まっている。
(Medister 2014年4月15日 葛西みゆき)
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