2005年以降、毎年2月4日は、世界対がんデー(World Cancer Day)と定められ、癌対策の政治的優先事項としての向上を目指す日とされており、世界100カ国以上の350を超える対がん組織からなるコンソーシアムである国際対がん連合(UICC)が中心となり、癌への意識向上と予防、検出、治療への取組を促すための啓蒙活動を行っている。
今年の世界対がんデーの目前、世界保健機構(WHO)より「世界がん報告(World Cancer Report)」が発表された。WHOの付属機関、国際がん研究機関(IARC)がまとめたところによると、2012年に新たにがんと診断された患者はおよそ1,400万人、20年後には2,200万人まで増え、その間、がんにより死亡する人は年間820万人から1300万人に増えると予想されている。癌の発症には地域差があり、世界全体の患者数の60%以上、死亡例の70%以上はアフリカ、アジア、中南米で報告されている。一方で人口比を考慮すると、北米や西欧、日本や韓国、オーストラリアやニュージーランドといった高所得国で罹患率が高いという特徴がある。2012年に新規に癌と診断された患者数は、全世界でアジアが半数近くを占め、その大半は中国だった。次いで欧州(25%)、北中南米(20%)、アフリカ・中東(8%強)、死亡した患者では、アジア(50%以上)、欧州(21.4%)、北中南米(16%)、アフリカ・中東(約10%)だった。
男女別の発症率は、男性は肺癌および口腔癌が、女性は乳癌と子宮頸癌が高い。患者増加の主な原因としては、世界的な人口の増加と高齢化、リスクの高い生活習慣が挙げられた。中でも喫煙は肺癌のみならず、すべての癌に対するリスクとされている。他にもアルコールの多飲、不健康な食生活、運動不足、過剰な紫外線などもあるが、特に発展途上国におけるヒトパピローマウイルス(HPV)や肝炎ウイルスへの感染による癌の発症も問題とされている。
今後は、癌患者数の多い発展途上国だけではなく、高所得国でも「癌対策で最も力を入れるべき点は予防」であるとしている。
(Medister 2014年2月10日 葛西みゆき)
World Cancer Report 2014 (International Agency for Research on Cancer)