
1月3日、歌手でもあり、関西を中心にカリスマ的人気を誇るタレントやしきたかじんさんが食道癌で亡くなった(享年 64歳)。さらに1月11日、映画やドラマで幅広く活躍した女優の淡路恵子さんも、同じく食道癌で亡くなった(享年 80歳)。年が明けて間もないが、すでに2名の著名人が食道癌で亡くなっていることから、食道癌への注目が集まっているようだ。
食道癌は、年間約2万人が罹患し、1万人以上が亡くなっているといわれている。罹患率は、男性は女性の5倍以上である。食道癌のハイリスク因子として喫煙とアルコールがあるが、特に扁平上皮がんでは、喫煙と飲酒が相乗的に作用してリスクが高くなることが指摘されている。日本はアジアの中でも罹患率が高く、熱いマテ茶を飲む南ブラジルやウルグアイ、中国や日本、香港などでも、熱い飲食物の摂取による食道粘膜の炎症が食道癌リスクの増加が懸念されている。
食道癌は人間ドックなどの内視鏡検査で発見されるのはおよそ20%程度。この時点であれば早期ともいえるが、多くの場合は症状が出てから初めて受診することが多く、また喫煙・アルコール摂取という高リスク群の患者は中々病院を受診せず、かなり進行した状態で初めて診断を受ける場合も多いという。食度癌治療は手術や抗癌剤療法が中心となるが、手術難度が比較的高い疾患でもある。
そんな中、食道癌治療の実績を評価した「日経実力病院調査」では、大学病院やがん治療の専門病院など、人材や器具など環境の整った病院が上位を占めたことが分かった。治療法としては従来の食道癌切除術だけではなく、胸腔鏡・腹腔鏡による治療も増加傾向にあるという。特に国立がんセンターは日本で最も食道癌手術の多い病院だったが、およそ半数が胸腔鏡・腹腔鏡手術であった。
技術の進歩により治療法が広がる食道癌であるが、それでも食道癌で亡くなる人はあとを絶たない。新薬の開発、予防法や早期発見法の確立を願うとともに、お二人のご冥福をお祈りしたい。
(Medister 2013年1月16日 葛西みゆき)
食道癌診療マニュアル―消化器外科・内科医のための