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第4回 呼吸器内科と連携したチーム医療

吉村 博邦 先生
練馬光が丘病院
常勤顧問・呼吸器外科
■専門分野:呼吸器外科、肺癌、縦隔腫瘍、気胸、胸部外傷など

Q&A

 これまでの先生のキャリアについて教えて下さい。
 最初は一般外科にいました。その後、財団法人結核予防会結核研究所を経て、北里大学病院の呼吸器外科で肺がんを中心に診療を行っていました。さらに、アメリカのがん治療のメッカといわれているテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター呼吸器外科に招へいされ、約1年3か月にわたって患者さんを診療したり、学生や研修医を指導したりしました。帰国後は北里大学病院で診療を続け、平成20年から当院に勤めています。


 地域柄、高齢の患者さんが多いとのことですが、治療で工夫していることは何でしょうか?
 手術のときには、ほとんどの患者さんで「胸腔鏡手術」を実施しています。胸腔鏡手術とは、胸に数か所の穴を開け、専用器具を入れてがんを切除する方法です。胸を大きく開ける開胸手術と比べて、回復が早いというメリットがあります。高齢者の場合、開胸手術を行うと、体力の低下が著しく、入院期間が長くなってしまいます。すると、足腰が弱くなってしまい、退院した後でも歩きにくくなり、生活の質が大きく下がります。胸腔鏡手術なら、手術の翌日から歩けるようになり、食事も可能です。手術後には化学療法も行うこともありますが、現在では副作用も少なくなっています。今では手術を受けた患者さんの約6割が、再発せずに済んでいます。


 がんの治療にあたり、心掛けていることは何でしょうか?
 痛みの緩和には注意を払っています。患者さんにとって、やはり痛みは辛いものです。痛みがあると眠れず、体力が落ちてしまい、回復のスピードにも影響が表れます。がんとたたかうモチベーションの低下にもつながります。効果の高い鎮痛剤が多く登場しており、患者さんの要望に応じて処方します。飲み薬や点滴だけでなく、皮膚に貼るタイプのものもあります。


 他の医師と連携するチーム医療に力を入れている理由は何でしょうか?
 理由は二つあります。一つは、担当する科によって注目するところが変わるためです。呼吸器内科は呼吸機能に注目しますが、消化器内科なら栄養、循環器内科なら血圧などに注目します。患者さんをトータルでサポートする必要があります。


 もう一つの理由は何でしょうか?
 転移の問題があるためです。肺は全身の総ての血液が通る臓器です。そこで酸素を受け取り、血液は全身に行き渡ります。肺でできたがん細胞は、血液を通じて、特に肝臓・脳・骨・副腎に転移しやすいのです。肺がんを治療したから終わり、というわけにはいかないのです。他の臓器に転移していないか、注意深く観察しなければいけません。そのため、治療中はもちろんのこと、治療後でも他の科と相談しながら検査を受けていただくようにしています。そして逆に、血液を通じて、他の臓器でできたがんが肺に転移してくることもあります。他の科でがんの手術を受けた患者さんは、必ず肺に転移していないか、呼吸器外科で検査するようにしています。


 肺がんの診断で難しいと感じる点はどんなところですか?
 肺がん特有の初期症状がなく、早期発見の難しさを感じています。特に、肺の奥でがんができると、痛みや症状がほとんどないため、気付いたときには手術できないほどの大きさにがんが進行していることもあります。その場合には、化学療法や放射線治療を行うことになります。ただ、最近では、抗がん剤の種類が増えており、選択肢が広がっています。かつては、手術ができずに化学療法だけで治療したとき、1年後の生存はほぼ絶望とされてきましたが、今では約6割の患者さんが生存するようになりました。


 治療ではどのような難しさがあるのでしょうか?
 肺がんの患者さんの中には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)をもつ方もいます。COPDでは肺機能全体が低下しているため、手術で切除できる範囲が限られてしまいます。抗がん剤治療でも、合併症として肺線維症を引き起こしやすくなります。その場合には、抗がん剤の投与量を落として時間をかけるといった工夫をしています。


 今後の展望について教えて下さい。
 早期発見の技術が高まれば、がんがあまり進行していない状態で手術ができ、予後がよくなると思います。現在はレントゲン写真やCTなど、画像検査が多く行われていますが、血液検査(腫瘍マーカー)で早期発見できるようになればいいと考えています。今は、治療中のモニターとして、腺がんで高値を示すCEAや、扁平上皮がんに特徴的なSCCなどが腫瘍マーカーとして用いられています。しかし、いずれも肺がん特有というわけではなく、血液検査で肺がんを診断できないのが現状です。今後、研究が進んで、肺がん特有の腫瘍マーカーが見つかることを期待しています。また、治療についても、今後は手術から薬にシフトしていくのではないでしょうか。そうなれば、手術では治療できない肺がん患者さんも希望がもてるようになると思います。


 最後に、患者さんや家族の方にメッセージをお願いします。
 患者さんには、治療を諦めないでほしいということです。新しい薬が次々と登場しており、生きていれば完治できる治療法に出会える機会は訪れます。がんの進行を止めるだけでも意味はあると思います。そして家族の方、あるいはまだがんになっていないという方は、定期健康診断を受けるようにして下さい。そして、禁煙を心掛けて下さい。喫煙者の肺がん死亡リスクは、禁煙者の約5倍にもなります。また、禁煙後10年でも、禁煙者の約1.4倍の肺がん死亡リスクがあるという研究報告があります。喫煙する本人だけでなく、副流煙にさらされる家族にも肺がんリスクをもたらします。禁煙は最大の肺がん予防策です。

略歴

練馬光が丘病院常勤顧問・呼吸器外科。東京大学医学部卒業。医学博士。北里大学名誉教授(元医学部長)。米国テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターへ留学(准教授)。日本外科学会特別会員。日本胸部外科学会名誉会員。日本呼吸器外科学会名誉会員。日本呼吸器内視鏡学会名誉会員。全国医学部長病院長会議監事(元会長)。日本専門医機構理事長(兼務)。





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