更新日:2022/11/19
第4回 肺癌~たばこの歴史を中心に~
さて、第4回目は『肺癌』です。・・・実は肺癌で亡くなった武将を探そうとがんばったのですが無理でした。強いて挙げれば、晩年に咳が多かった豊臣秀吉(おそらく腎不全による死去)や喀血があった武田信玄(胃癌か肺結核)あたりかなと考えましたが、決定打に欠けるため人物をとりあげず、戦国時代に伝来した『タバコ』にスポットを当てみることにいたしました。
肺癌について
癌での死亡者数1位が肺癌です。肺癌のほとんどは、気管支、肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺癌は早期発見が難しく、発見されたときには根治が難しい状態になっている場合が多く死亡率が高い癌となっています。進行すると咳や血痰、息切れ、胸痛、呼吸困難などが起こりますが、肺癌に特有の症状ではありません。気になる症状がある場合は医療機関を受診し、CT検査などを受けて下さい。
肺癌になる1番の原因は『タバコ』です。肺内の気道粘膜の上皮は、たばこの成分などの、発癌性物質に晒されると変異を起こしやすく、これが積み重なると癌になります。喫煙者は非喫煙者に比べて肺癌のリスクが4-5倍になり、1日20本以上のヘビースモーカーは、なんと肺癌リスクが10倍になります。本人がたばこを吸わなくても、副流煙でリスクが2-3割増しになるなどたばこはとても有害なものなのです。1日の喫煙本数×年数(喫煙指数)が400を超える方は肺癌のリスクが高いので検診を受けることをおすすめします。タバコは肺癌以外にも食道癌、咽頭癌などのリスク因子です。癌全体で見ましてもリスクが1.5倍になるというデータがありまして、身体に悪いことは明白です。禁煙ができるならそれに超したことはありません。健康保険が使える禁煙補助薬もありますよ!
伊達政宗も吸っていた、たばこの歴史は戦国時代から!
さてここからはたばこの歴史についてお話いたします。タバコの原産は南米です。元々は占いなどの儀式に使われていたようですが、時代が下るにつれ、嗜好品として用いられるようになました。15世紀末、コロンブス隊によってヨーロッパに持ち帰られ、そこから世界に広がりました。日本にタバコが伝来したのは戦国時代と言われております。鉄砲と共に種子島に伝来したって話があるようです。最古の記録は1601年、スペインの修道士が徳川家康にタバコの種とタバコから作った薬献上したもの。喫煙の記録は1609年が最も古いものとなります。この頃はキセルを用いて吸うのが主流でした。
初期の頃は非常に高価な薬品として扱われたため武士か富豪くらいしか吸えなかったようです。当初幕府は、傾寄者が「南蛮文化のシンボル」として吸ったり、火事の原因となるため禁止令を出していましたが、幕府や藩の専売としてお金を稼ぐ手段となったため、徐々に規制を緩めました。江戸中期には値下げもあって庶民にも喫煙習慣が広まりました。実は早くもこの時代に喫煙が身体に悪いことを指摘していた人物がいます。養生訓で有名な本草学者、貝原益軒はタバコの毒性や病気の原因となりうること、また習慣性も書物に残しております。凄い先見性ですね。
東北の雄、伊達政宗はタバコを薬として1日3回規則正しく吸っていたそうです。第1回で述べたように政宗の死因は食道癌(または胃癌)およびそれに伴う癌性腹膜炎と考えられます。喫煙は食道癌のリスクを2~5倍に高めるという研究結果もあり、政宗の死にはタバコが関わっていたのかもしれませんね。タバコを一服という表現は、薬であったことの名残と考えられますが、タバコは身体に毒ですので控えられることをお勧めいたします。