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遺伝性乳がん・卵巣がんのリスクとなるBRCA2遺伝子バリアントの新規機能解析法を開発

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所細胞情報学分野池上政周任意研修生、高阪真路ユニット長、間野博行分野長らの研究グループは、国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科田村研治科長、国立大学法人東京大学大学院医学系研究科田中栄教授、細谷紀子准教授、国立研究開発法人理化学研究所生命医科学研究センター桃沢幸秀チームリーダーらと共同で、遺伝性乳がん・卵巣がんの原因として知られるがん抑制遺伝子BRCA2遺伝子のバリアントに対するハイスループット機能解析法を開発した。

日本人の女性は、その生涯のうちに9%が乳がんを、1%が卵巣がんを発症するといわれており、乳がんは最も頻度の高いがんである。一般的にはがんは遺伝する疾患ではないが、乳がん・卵巣がんのうちおよそ10%は遺伝性に生じる。特に、BRCA1およびBRCA2の2種類の遺伝子のいずれかに生まれつき病的バリアントを有する場合を遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(Hereditary Breast and/or Ovarian Cancer syndrome: HBOC)といい、親から子に二分の一の確率で発がんのリスクが遺伝するという。

本研究グループは、これまでにがん遺伝子に対する革新的なハイスループット機能解析手法(mixed-all-nominated-mutants-in-one method: MANO法)を構築し、EGFRやERBB2といったがん遺伝子の意義不明バリアントの機能解析を行ってきた。この手法を発展させ、BRCA2の機能解析手法であるMANO-BRCA法(MANO-B法)を確立し、186種類の意義不明バリアントを含むこれまでで最大規模の244種類のバリアントについて機能解析を行った結果、新たに37種類の病的バリアントを同定した。さらに本手法の臨床応用例として、遺伝子検査で新たに発見されたバリアントの病的意義を迅速に判定し、報告するシステムを構築した。

本研究において、これまで病的意義が不明であった186種類のBRCA2バリアントの機能解析を行い、37種類の病的バリアントと126種類の正常な機能のバリアントを新たに同定できたことは、遺伝子検査の有用性を向上させることに繋がる大きな結果である。このMANO-B法を継続して多数のVUSの存在に対して実施していくことで、適切な治療方針が定まらず不安を抱えているVUS保持者を減らすことができる。一方で、23種類の中間的な機能を持つバリアントが認められ、これらが発がんに寄与しているかどうかについて、今回の結果からは意義付けができなかった。中間的な機能を持つバリアントの保持者を多数集め、がんの発症率を解析するような疫学研究が望まれる。

また、今回提唱したABCDテストは5週間で報告可能であり、臨床的に許容できる迅速性を有するものである。VUSを保持することが判明し不安になっている患者に対して、リスク低減手術やPARP阻害薬投与の必要性を判断するためのコンパニオン診断としての臨床応用が期待される。
(Medister 2020年6月15日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 遺伝性乳がん・卵巣がんのリスクとなるBRCA2遺伝子バリアントの新規機能解析法を開発

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