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世界規模の国際ネットワークによる最大のがん種横断的全ゲノム解読

国立研究開発法人国立がん研究センターは、国際がんゲノムコンソーシアム(International Cancer Genome Consortium: ICGC)が主導するがん種横断的な全ゲノム解析プロジェクト(Pan-Cancer Analysis of Whole Genome: PCAWG)に参加し、これまでで最大の38種類のがん2,658症例のがん全ゲノム解読データを統合解析した研究成果を科学誌「Nature」で6本の論文として英国時間2月5日付け(日本時間2月6日)に発表した。

2008年に発足したがんゲノム研究に関する世界最大の国際共同研究(国際がんゲノムコンソーシアム)では、コンソーシアム内で集積した38種類のがん、2,658症例のがん全ゲノム解読データについて、1,300名を超える世界中のがん研究者(日本からは60名以上)が参加のネットワークによって、様々な視点から解析を行い、がんゲノムの理解を進めるプロジェクト(Pan-Cancer Analysis of Whole Genome: PCAWG: がん種横断的な全ゲノム解析プロジェクト)を2015年から開始した。これは現時点で世界最大のがん全ゲノム解読の研究である。

得られたシークエンスデータは、品質検定後、全て統一された解析パイプライン(今回は3つの解析パイプラインの結果を参照し、より精度の高いデータを産出した)によって、体細胞変異・染色体構造異常・コピー数異常を検出した。さらに、その結果について、それぞれテーマの異なる16の解析グループが様々な視点から解析を行った。

その結果、がんゲノムには、タンパク質コード領域および非コード領域を合わせて平均して4~5個のドライバー変異が含まれていた。しかし、希少がんなど一部の症例の約5%ではドライバー変異が特定されなかったため、がんドライバーの発見はまだ完了していないことが示唆された。単一の破壊的事象によって多くの染色体構造異常が局所的に集中して発生するクロモスリプシス(染色体粉砕)は、しばしば腫瘍進化の初期事象として認められる。例えば、末端性黒色腫では、これらの事象はほとんどの体細胞点変異より先に起こり、いくつかのがん関連遺伝子に同時に影響を及ぼす。また、テロメアの維持異常を伴うがんは、複製活性が低い組織から生じることが多く、テロメアの臨界レベルまでの短縮を防ぐいくつかの分子機構を呈している。生殖系列遺伝多型は、高頻度あるいはまれな多型のいずれも、点変異、染色体構造異常、レトロトランスポゾン転位など、体細胞変異のパターンに影響を及ぼす。そして、TERTプロモーターにおける非コード領域変異以外にも、少数ではあるががんを引き起こす非コード領域変異があることが明らかになった。さらに、塩基置換、小さな挿入や欠失、染色体構造異常を引き起こす変異誘発過程における新しいシグネチャーを同定し、スプライシング・発現レベル・融合遺伝子・プロモーター活性といった点において体細胞変異が転写に様々な影響を及ぼすことを複数のがん種において解明した。

今後、日本人のがん症例について大規模な全ゲノム解析を行い、そのデータと精度の高い臨床情報とを合わせたビックデータが構築されることで、全ゲノム情報の活用による新たな臨床開発が進むことも期待される。
(Medister 2020年3月4日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 世界規模の国際ネットワークによる最大のがん種横断的全ゲノム解読 日本人症例での解析を進めることで日本人に最適な臨床開発への発展を期待

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