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老化に起因した発がんメカニズムの一部解明 がん発生予防の可能性を示唆

がんは、遺伝子の変異に起因して誘発されるが、ほとんどの変異は無秩序であるため、生活習慣の改善や慢性炎症の低減以外に、有効な発がん予防法の開発は困難と予想されていた。

発がん研究の分野でも、遺伝子の変異の入り方と発がんの関係には未解決の疑問が残っており、世界的にも論争が続いている。本研究は、がん抑制遺伝子への変異の入り方と、その要因が老化に起因することを明らかにしたもので、新たな予防標的が明確になった。

これまで、ほとんどの変異はDNA複製過程で無秩序に誘導されると考えられてきた。また、発がん過程は、がん抑制遺伝子が機能を欠損し、増殖抑制が効かなくなった細胞の出現・増殖を数回経て進行すると考えられている。しかし、これらの誘導機構・過程には未だに不明な点が多くある。

研究チームは、細胞の老化過程で蓄積したDNA損傷を引き金として、変異のリスクが上がるゲノム不安定性の状態になり、またこれに伴う変異導入に起因して、がん抑制遺伝子の変異したクローン進化が誘導されることをin vitroのモデル解析系を用いて示すことに成功した。

DNA複製エラーは、一定頻度で無秩序に生じるが、これらはミスマッチ修復機構によって修復される。このため、ミスマッチ修復欠損細胞では、DNA複製エラーが高頻度で誘導・蓄積することが知られている。しかし今回の研究で、がん抑制遺伝子のクローン進化は、ミスマッチ修復欠損よりゲノム不安定性により誘導され、ゲノム安定性が保持された背景では抑制されていることが分かった。

また、ゲノム不安定性は、染色体不安定性(CIN)とマイクロサテライト不安定性(MSI)のふたつに大別されるが、本研究において両者は相互排他的であることが示され、中高年以降に発症したがんではどちらか一方が認められることを裏付けた。また、マイクロサテライト不安定性の誘導機構も明らかになり、新たな研究展開が期待される。
(Medister 2019年9月17日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 老化に起因した発がんメカニズムの一部解明 がん発生予防の可能性を示唆

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