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LC-SCRUM-Japanで構築した日本最大臨床ゲノムデータを活用しスーパーコンピュータで治療薬の効き目を予測

慶應義塾大学医学部内科学(呼吸器)教室の安田浩之専任講師、肺がん病態制御寄附講座浜本純子特任助教、腫瘍センターの池村辰之介助教、臨床研究推進センターの副島研造教授と、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の鎌田真由美准教授、荒木望嗣特定准教授、奥野恭史教授、国立がん研究センター先端医療開発センターの土原一哉トランスレーショナルインフォマティクス分野長、小林進ゲノムトランスレーショナルリサーチ分野長、同東病院の後藤功一呼吸器内科長、松本慎吾医長、同研究所の河野隆志ゲノム生物学研究分野長らのグループは、LC-SCRUM-Japanで構築した日本最大の臨床ゲノムデータを活用し、スーパーコンピュータ「京」を用いた予測システムにより、肺がんの遺伝子変異に対する薬剤有効性が高精度に予測可能なことを確認した。

がんゲノム医療の普及により膨大な種類の遺伝子変異が同定されてきた。その中には、治療薬(分子標的薬)の効果が明らかでないものも多く存在している。このような「治療効果が明らかでない遺伝子変異」に対しては、有効な治療薬を選ぶ方法がなく、がんゲノム医療を確立する上で大きな課題となっていた。

研究グループでは、国内最大の肺がん遺伝子スクリーニングネットワークLC-SCRUM-Japanと協力し、日本最大の臨床ゲノムデータベースに登録された2,164人の肺がん患者におけるEGFR遺伝子の稀な変異の分布を明らかにした。それぞれの遺伝子変異に対して、どのような治療薬の効果が高いのかを細胞実験で調べ、薬剤に対する効果が変異によって大きく異なることを明らかにした。

このような遺伝子変異ごとの多様な感受性を、細胞実験など行うことなく予測できないかと考え、スーパーコンピュータ「京」を用いた分子動力学シミュレーションにより薬剤の有効性を予測した。予測された薬剤有効性は実験データと一致しており、本システムが個々の遺伝子変異に対し適した薬剤を高精度に予測可能であることが確認された。

本システムを実用化することで、細胞や動物を用いた実験を行うことなく、迅速に効果の高い治療薬を選択できるようになることが期待される。また、2021年に稼働予定のポスト「京」ではより高速に大規模な計算が可能となるため、さらに多くの変異を対象とした網羅的な薬剤有効性予測を行うことが可能となるであろう。本成果は、がんゲノム医療の現場で見つかる「治療が明らかでない遺伝子変異」に対して有効な治療薬を選択し、より早く多くのがん患者に最適な薬剤を届けることにつながる大きな成果と考えられている。
(Medister 2019年5月24日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース LC-SCRUM-Japanで構築した日本最大臨床ゲノムデータを活用しスーパーコンピュータで治療薬の効き目を予測 -がんゲノム医療における新たなツールの開発-

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