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骨軟部腫瘍の良悪性を高精度に識別可能なマイクロRNAの診断バイオマーカー同定

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所分子細胞治療分野、中央病院骨軟部腫瘍科、分子発がん研究ユニットらの研究チームは、悪性の骨軟部腫瘍を血液で高精度に識別可能な新規診断バイオマーカーを同定した。

骨軟部腫瘍(肉腫)は、腕や足の他、胸部や腹部などの骨や軟部から発生する悪性腫瘍である。希少で多種多様な組織亜型が存在するため、適正な早期診断が難しく、主に非専門施設などで初期診断を良性腫瘍などと間違って診断され、適切な初期治療が受けられずに不幸な転帰を辿る例も少なからず存在している。そのため、簡便で有用な診断マーカーの開発は本腫瘍の治療成績向上に急務の課題となっている。

マイクロRNAは、血液や唾液、尿などの体液に含まれる22塩基程度の小さなRNAのことで、近年の研究で、がん等の疾患にともなって患者の血液中でその種類や量が変動することが明らかになっている。そのため、患者の負担が少ない診断バイオマーカーとして期待されている。本研究では、骨軟部腫瘍患(肉腫)に特異的なバイオマーカーを同定することを目指し実施した。

本研究では、2007年から2013年に国立がん研究センターを受診した1歳から97歳の骨軟部腫瘍患者のうち、治療前血清が研究利用可能であった1002例を対象とした。凍結保存血清よりRNAを抽出し、マイクロアレイ(DNA チップ、3D-Gene)にてマイクロRNA2,565種類の網羅的な発現データを取得した。対照として健常人、他がんの血清より取得したアレイデータを使用した。初発の良悪性腫瘍症例を探索群、訓練群(1)・(2)、検証群に割り当てて、肉腫に特異的なバイオマーカーの探索と検証を行った。

最終的に骨軟部腫瘍患者897例(悪性:414例、中間悪性:144例、良性:339例)と健常人275人、他がん240例のデータを解析に使用した。その結果、血清マイクロRNAの発現様式の特徴は、悪性と良性で異なる集団を形成していた。一方、組織亜型間の発現様式の特徴には、大きな差は認められなかった。

探索群(悪性77例、良性84例)において良悪性間で有意に発現差のある83種のマイクロRNAの内、訓練群(1)(悪性117例、良性109例、健常人150例)で、健常人、良性、悪性の順に高発現であり、訓練群(2)(悪性10例、良性10例)においてqRT-PCR法で検証に成功した12種のマイクロRNAをバイオマーカー候補として選定した。これら12種のマイクロRNAの内、7種を用いた診断指標VIでは、検証群(悪性107例、良性124例、健常人125例)で、感度90%、特異度95%と悪性に対し非常に高い診断精度を確認することができた。

本研究結果から、血清マイクロRNAを用いた体液診断は、骨軟部腫瘍における良悪性の早期診断や悪性腫瘍の再発モニタリングに有用である可能性が示唆され、今後の臨床応用を目指して、現在前向き検証試験を実施中である。
(Medister 2019年4月29日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 骨軟部腫瘍の良悪性を高精度に識別可能なマイクロRNAの診断バイオマーカー同定

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