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がんを攻撃する魚雷型ナノカプセル

理化学研究所(理研)開拓研究本部伊藤ナノ医工学研究室の上田一樹研究員、伊藤嘉浩主任研究員らの研究グループは、両親媒性ポリペプチドでナノサイズの筒状構造体を作製し、その中に抗がん剤を入れ、筒の両端を半球でキャップした「魚雷型ナノカプセル」を開発した。

近年、ドラッグデリバリーシステムや生体機能解明の基礎研究分野において、アスペクト比を持つロッド状構造が注目されている。ロッド状構造は従来の球状構造に比べ、より素早く細胞内に取り込まれるといった研究成果をはじめ、血流中において長く滞留する、特定の組織に集積するなど、ユニークな性質を示すことが報告されているためである。

ロッド形状がもたらすこれらの性質は、ドラッグデリバリーシステムのキャリアーや細胞内輸送ベクター(運び屋)の開発にとって魅力的である。しかし、ロッド状カプセル構造をナノサイズで実現することは難しく、実際にロッド状ナノカプセルを開発した例は少なく、応用研究した報告例はなかった。

今回、研究グループは、両親媒性ポリペプチドで形成される筒状構造体の存在下で、球状構造体を作る両親媒性ポリペプチドを自己集合化させることで、ロッド状の魚雷型ナノカプセルの作製に成功した。サイズは筒状構造体と球状構造体に由来しており、筒状構造体の部分は加熱によって伸長させることができ、さまざまな長さのナノカプセルを調製できる。また、この魚雷型ナノカプセルは、球状カプセルと比較して、細胞内に素早く多量に取り込まれやすいことも示した。さらに、抗がん剤を内包して担がんマウスに注射することで、腫瘍患部へ素早く薬剤を輸送し、抗がん効果を発揮させることにも成功している。

本研究で開発した「魚雷型ナノカプセル」を用いることで、従来の球状カプセルでは困難であった、がん治療をはじめとするさまざまな薬剤体内輸送用カプセルや細胞内への核酸輸送用カプセルとしての応用が期待できる。今回の成果は、米国の国際科学雑誌『ACS Nano』掲載に先立ち、オンライン版(1月4日付け)に掲載されている。
(Medister 2019年4月1日 中立元樹)

<参考資料>
理化学研究所プレスリリース がんを攻撃する魚雷型ナノカプセル -ナノサイズの筒に抗がん剤を入れ、半球で蓋をする-

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