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「LC-SCRUM-Japan」の研究成果に基づいて、肺がんのマルチ遺伝子診断法が承認

国立研究開発法人国立がん研究センター東病院は、呼吸器内科長後藤功一氏が研究代表者となり、2013年より多施設共同研究として全国肺がん遺伝子スクリーニングネットワーク「LC-SCRUM-Japan」を実施中であり、これまで様々な新規分子標的薬や遺伝子診断薬の開発に貢献してきた。

今回、サーモフィッシャーサイエンティフィックジャパングループ ライフテクノロジーズジャパン株式会社からの委受託研究として、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いた遺伝子診断システム(「オンコマイン Dx Target Test マルチCDxシステム」)の臨床性能評価を、LC-SCRUM-Japanに蓄積された検体、遺伝子解析データを活用して行い、その結果に基づいて、本診断システムが複数の遺伝子の診断法として厚生労働省から追加承認された。

日本における死因の第1位はがんであり、その中で肺がんはがん死亡原因として最多である。肺がんに罹患した患者の約2/3の患者が手術不能の進行がんとして発見され、抗がん剤による薬物治療や放射線治療などを受けている。しかし、その治療効果は充分ではなく、より有効な新しい診断法、治療法の開発が必要とされている。

そのような中で、近年の遺伝子解析技術の進歩により、肺がん発症の原因となる様々な遺伝子異常が相次いで発見され、これらの遺伝子異常を有する肺がんには、遺伝子異常を標的とした分子標的薬の治療効果が非常に高いことが分かってきた。既に治療薬が承認されているEGFRやALKといった遺伝子異常に加え、最近では、ROS1やBRAFという遺伝子に異常のある肺がんにも、それぞれ有効な分子標的薬が承認され、現在、進行肺がんの治療開始前には、遺伝子検査によってこれらの遺伝子異常を診断することが必須となっている。

これまでの遺伝子診断法は、個々の遺伝子をひとつずつ検査する“1遺伝子1検査”の方法が用いられてきたが、この方法で複数の遺伝子を診断するには、多くの時間と検体量が必要であるため、全ての遺伝子異常を確認する前に、従来の薬物療法を開始しなければならない場合が多々見受けられる。このため、現在の肺がん診療ではこれらの遺伝子を、より早く、より少量の検体で診断する方法が求められていた。

LC-SCRUM-Japanでは、全国から約260施設の参加のもと、これまでの6年間で7000例を超える肺がん患者の遺伝子解析を実施してきた。この大規模な遺伝子解析データを基に、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いた遺伝子診断システム(「オンコマイン Dx Target Test マルチCDxシステム」)の臨床性能評価を行ったところ、本診断システムは、複数の肺がん標的遺伝子について、極めて良好な診断性能を有していることが示された。この結果に基づいて、この度、本診断システムの適応が追加承認され、これまでのBRAF遺伝子に加えて、EGFR、ALK、ROS1の遺伝子診断が可能となり、8種類の分子標的薬における治療適応を同時に判定することができるようになった。

今回の本診断システムの追加承認によって、これまで多くの検査時間と検体量を使いながら、ひとつずつ診断してきた複数の標的遺伝子を、一度の解析で同時に診断することが可能になり、より迅速に、かつ多くの患者に有効な治療薬(分子標的治療薬)を届けることが出来るようになる。国立がん研究センターでは、今後もLC-SCRUM-Japanにおいて、全国の参加施設や肺がん患者の協力のもと、大規模な遺伝子解析データや臨床データの蓄積によって、新しい遺伝子診断法や新しい治療薬の開発を推進し、肺がんの最適医療(プレシジョンメディシン)の確立に挑戦する方針である。
(Medister 2019年3月11日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 「LC-SCRUM-Japan」の研究成果に基づいて、肺がんのマルチ遺伝子診断法が承認

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