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肝臓がんのゲノムを新手法で解析 B型肝炎ウイルスによる新たな発がんメカニズムを発見

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野は、第3世代のシークエンサーを用いた最新の解析方法でB型肝炎陽性肝臓がん108症例を含む、日本人の肝臓がん373症例のゲノム解析を行った。その結果、B型肝炎ウイルスに感染後、肝炎から肝臓がんに至る新たな発がんメカニズムを発見した。

肝臓がんは日本でのがん死亡者数第5位を占める難治がんである。その発症には、肝炎ウイルスの感染や飲酒等による肝炎・肝硬変が重要な危険因子であることが知られている。しかし、このような肝障害がなぜがんの発生につながるのか、なぜ特定の患者でがんが発生するのかは不明で、その解明は肝臓がんの予防や早期発見にとって重要な研究である。

これまでの研究から、肝臓がんの発症には、遺伝子の点突然変異、染色体構造異常、ウイルス感染によるウイルスゲノムの挿入によるゲノム異常、メチル化異常に代表されるエピゲノム異常が関与していることが知られている。しかし、こうしたゲノム異常とエピゲノム異常など様々な関連について全ゲノム規模での解析は行われておらず、それぞれがどのように関連して肝臓がんの発生に寄与しているのか明らかになっていなかった。

本研究では、肝臓がんの発生におけるゲノム異常とエピゲノム異常の関連を検討するために、全ゲノムと全エピゲノムの解析に加えて、第3世代シークエンサー(Pac Bio)による全ゲノム解読、ゲノム濃縮法によるウイルスゲノム解析といった新たな解析手法を行い、全部で373症例の肝臓がん症例について解析を進めた。その結果、肝臓がんのゲノム及びエピゲノム異常とB型肝炎ウイルス感染や飲酒などの発がん要因との関連を明らかにし、肝臓がんの新たな発症メカニズムを発見した。

今回明らかになったことは、まずがん細胞のメチル化異常(エピゲノム異常)がゲノム異常を起こしやすい環境を生み出しているということである。次に、種々の発がん要因による遺伝子変異の起こりやすさにも、エピゲノム状態が重要な要因となってくることである。さらに、B型肝炎ウイルス感染から発がんに至る新しいメカニズムを発見できたことも、本研究における大きな収穫である。

これらの結果を肝臓がんの予防に応用するために、更にその関係性の背景にある分子機構(なぜそういう関係が成立しているのか)を解き明かす必要があり、今後も研究を進めていく方針である。 (Medister 2019年3月10日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 肝臓がんのゲノムを新手法で解析 B型肝炎ウイルスによる新たな発がんメカニズムを発見

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