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世界初、MDM2阻害剤を用いた内膜肉腫対象医師主導治験 中央病院MASTER KEY projectで開始

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、内膜肉腫を対象に、新規のMDM2阻害剤(murine double minute 2: MDM2)であるDS-3032b(ミラデメタン)の医師主導治験を開始した。内膜肉腫は、希少がんの中でも発症頻度が極めて低く対象患者数も少ないため、治験の実施は世界でも初めてとなる。

がんは粘膜や皮膚などの上皮性細胞から発生する悪性腫瘍であるのに対し、肉腫は筋肉や骨などの非上皮性細胞から発生する悪性腫瘍と定義されている。内膜肉腫は心臓や肺動脈といった体の循環を司る大血管を原発とする非常に希少な疾患である。遠隔転移がない場合には、外科的切除が第一選択となる。しかし、多くの場合は肺動脈や大動脈などの大血管が原発であることから完全切除は困難であり、根治は望めず、標準的な治療法も未だ確立していない。

また、内膜肉腫は急速な病状進行を呈する極めて予後不良ながんで、診断後の生存期間は大動脈原発では約5ヶ月から9カ月、肺動脈原発では約13ヶ月から18カ月と言われている。内膜肉腫の約60%から70%にMDM2増幅が見られると報告されている。

MDM2は、がん抑制遺伝子のひとつであるp53の作用を制御するたんぱく質である。MDM2阻害剤は、MDM2とp53の結合を阻害することによってp53を活性化し、p53 を有するがん細胞に細胞死をもたらすことが期待されている。

本試験は、希少がんの研究開発・ゲノム医療を産学共同で推進する中央病院のMASTER KEY project (Marker Assisted Selective ThErapy in Rare cancers: Knowledge database Establishing registrY Protocol)の傘下で行われる5つ目の医師主導治験で、中央病院のみで実施するものである。

MDM2阻害剤DS-3032bは、前臨床試験においてMDM2とp53相互作用に対する薬理学的阻害作用およびp53による遺伝子発現の誘導作用が確認されている。これらの背景から、高いアンメットメディカルニーズがあり、早急な治療開発が急務とされている、MDM2増幅を有する内膜肉腫を対象として、DS-3032bの有効性および安全性を評価する医師主導治験を計画した。超希少な内膜肉腫ではこれまで薬剤開発を目的とした臨床試験は、世界的にも過去に実施された報告はない。そのため、今回の取り組みは内膜肉腫に発現するMDM2をターゲットとした世界初の医師主導治験となるものである。

本試験を通じて、製薬企業、AMED、アカデミアの産官学連携を推進し、希少がんの新規治療開発体制を整備することで、わが国の希少がん領域における臨床開発の活性化に貢献できるものと考えられる。
(Medister 2019年2月12日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 企業主導開発が困難な超希少がんの臨床試験計画や新薬開発手法の確立を目指す 世界初、MDM2阻害剤を用いた内膜肉腫対象医師主導治験 中央病院MASTER KEY projectで開始

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