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食道がんに対する放射線治療を併用した腫瘍融解ウイルス「テロメライシン」の臨床研究の最終報告

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学分野の藤原俊義教授、白川靖博准教授らの研究グループは、食道がんに対する腫瘍選択的融解ウイルス製剤「テロメライシン」を用いた放射線併用ウイルス療法の臨床研究を推進してきたが、13例の食道がん患者に治療を実施して臨床研究を終了した。

食道がんとは、食道に発生する癌腫の総称で、初期症状は食道違和感等の不定愁訴に近く、またリンパ節転移が多いことと、食道は他の消化器臓器と異なり漿膜(外膜)を有していないため、比較的周囲に浸潤しやすいこと等から、進行が早く、発見が遅れやすい。治療法としては、内視鏡治療、手術的治療、化学放射線療法などがあるが、胃癌、大腸癌を含む消化器の癌の中では予後が極めて悪い厄介ながんである。

藤原教授の研究グループは、1992年に米国テキサス州のMDアンダーソンがんセンターでウイルスを使ったがん治療の研究をスタートさせ、1999年には、岡山大学で日本初のウイルスによるp53遺伝子治療を開始した。また、2002年からテロメライシンの開発を始めた。

テロメライシンは、風邪ウイルスの一種であるアデノウイルスのE1領域に、多くのがん細胞で活性が上昇しているテロメラーゼという酵素のプロモーターを遺伝子改変によって組込み、がん細胞中で特異的に増殖してがん細胞を破壊することができるようにしたウイルス製剤である。テロメライシンがヒトのがん細胞に感染すると一日で10万~100万倍に増え、がん細胞を破壊する。一方、テロメライシンは正常組織細胞にも同様に感染はするが、テロメラーゼ活性がないためウイルスは増殖せず、正常組織での損傷は少ないと考えられている。オンコリスバイオファーマ(株)が米国で実施した、がん患者に対するテロメライシン単独の臨床試験においても、重篤な副作用は認められておらず、投与部位での腫瘍縮小効果などの有効性が認められている。

この度の臨床研究においては、大きな副作用もなく13例中8例で食道の腫瘍が消失し、安全性と有効性が確認できた。このためテロメライシンを用いたウイルス療法というものが、手術や標準的な抗がん剤治療が難しい食道がん患者などに役立つことが期待される。この研究成果は、米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(ASCO-GI)で発表予定である。
(Medister 2019年1月24日 中立元樹)

<参考資料>
岡山大学プレスリリース 食道がんに対する放射線治療を併用した腫瘍融解ウイルス「テロメライシン」の臨床研究の最終報告

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