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進行または転移性乳がんを対象とした日本主導のアジア国際共同医師主導治験を開始 日本のアカデミア主導の国際共同臨床試験の推進

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、進行または転移性乳がん患者を対象に、サイクリン依存性キナーゼ(以下、CDK)4/6阻害剤であるパルボシクリブの医師主導治験(試験略称: NCCH1607、PATHWAY、UMIN試験ID: UMIN UMIN000030816、ClinicalTrials.gov 登録番号: NCT03423199)を開始した。本試験は、国立がん研究センター中央病院が主導して、日本12施設、韓国6施設、台湾3施設、シンガポール2施設が参加するアジア圏での国際共同医師主導治験である。このほど参加4か国において試験実施準備が完了し、全ての国で患者登録を開始した。

国際共同試験では、短期間に多くの症例登録を行うことができ、スピーディーな治療開発に繋がるため、企業治験では最近国際共同試験が行われる数が非常に多くなっている。アカデミア主導の臨床試験でも、より早く患者の手元により良い治療を届けるという観点では国際共同試験が重要である。

国立がん研究センター中央病院では、これまで新規治療確立に対するニーズが高いものの製薬企業による新規治療薬の開発がなかなか進まない疾患に対して、多くの医師主導治験を積極的に実施してきた。さらに2016年度に、国際水準のアカデミア主導治験・臨床研究を日本主導で実施できる体制整備を目的として、医療法上の臨床研究中核病院の中から、国立がん研究センター中央病院を含め2施設が日本医療研究開発機構(AMED)国際共同臨床研究実施推進事業の拠点施設に選定された。これらの豊富な経験と臨床試験の支援基盤を活用して、これまで日本ではほとんど行われてこなかった、アカデミア主導の国際共同医師主導治験を開始するに至ったという。このような形式での国際的かつ総合的な治療開発研究は国内外でも非常に先進的な取り組みである。

本試験は、ホルモン受容体陽性/HER2陰性の進行または転移性乳がん女性患者を対象とし、2年間で180人の患者を登録する、パルボシクリブのプラセボ対照ランダム化比較第III相試験である。本試験の主要目的は、パルボシクリブとこの患者集団でよく使われる内分泌療法であるタモキシフェンとの併用投与と、プラセボとタモキシフェンの併用投与における無増悪生存期間を評価することである。現在承認されているパルボシクリブの適応症は、レトロゾールまたはフルベストラントとの併用投与の試験結果に基づいている。よって、本試験の実施により、パルボシクリブと新たな内分泌療法の併用投与を支持するエビデンスを構築すると同時に、将来、薬事承認について規制当局と協議することが可能となる。

本試験は、Pfizer Inc.との共同研究であり、同社から研究費と治験薬パルボシクリブの提供を受けている。製薬企業との共同研究の形式を取り、日本では医師主導治験として、海外では国立がん研究センター中央病院が製薬企業と同様な治験依頼者としての役割を担う形で実施する国際共同医師主導治験となる。治験の枠組みで行うことの大きな目的は、標準治療の確立にとどまらず、将来、薬事承認の取得について規制当局と協議することが可能となることである。また、国立がん研究センターの特徴を活かし、本試験で4か国から得られた検体の分析・解析を国立がん研究センターの研究所で実施することで、トランスレーショナル研究の発展にも役立てる仕組みとしている。

国立がん研究センター中央病院では、現在アジア地域でのネットワーク構築に特に力を入れており、今回の取り組みを発展させて国際共同試験を数多く手掛けることで、アジア圏での新薬を含めた治療開発を強力に推進することを目指しているという。
(Medister 2018年12月1日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 進行または転移性乳がんを対象とした 日本主導のアジア国際共同医師主導治験を開始 日本のアカデミア主導の国際共同臨床試験の推進

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