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卵巣がんを早期から検出できる血液中マイクロRNAの組み合わせ診断モデル作成

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所分子細胞治療研究分野は、早期診断が困難で予後の悪い卵巣がんについて、血液により高い精度(感度99パーセント、特異度100パーセント)で卵巣がんを検出する診断モデルの作成に成功した。

卵巣がんは年間約1万人が罹患し、その半数である約5000人が命を落とす大変予後の悪いがんである。卵巣は、骨盤内に位置するため、がん発生初期の段階では自覚症状に乏しく早期診断が極めて困難で、発見時にはすでに転移を伴う進行症例が6割を超えるという。そのため卵巣がんは、早期発見が強く望まれるがん種ではあるのだが、科学的に有効なスクリーニング方法は存在せず、初期の卵巣がんの多くが産婦人科受診の経腟超音波検査や、他の画像検査の際に偶発的に発見されており、非侵襲的かつ簡便な早期診断方法の確立が長年の大きな課題となっている。

本研究では、卵巣がん428例とその他のがん859例、がんを有さない2759例の計4046例全例の血液(血清)中マイクロRNAを網羅的に解析し、卵巣がん患者で有意に変化する多くのマイクロRNAを同定し、それらの組み合わせを利用した統計的解析により卵巣がん患者を特異的に判別できる判別式(診断モデル)を作成した。マイクロRNAとは、ヒトの細胞に存在する22塩基長程度の小さなRNAのことで、血液や唾液、尿などの体液にも含まれる。近年の研究で、がん等の疾患にともなって患者の血液中でその種類や量が変動することが明らかになっている。さらに、こうした血液中のマイクロRNA量は、抗がん剤の感受性の変化や転移、がんの消失等の病態の変化に相関するため、全く新しい診断マーカーとして期待されている。

解析対象例を探索群と検証群の2つにわけその精度を検証した結果、同モデルは卵巣がん患者全体の98.8パーセントを正しくがんであると判別することができ、診断精度の極めて高い(感度99パーセント、特異度100パーセント)診断モデルの作成に成功したことを確認した。ステージ別の検証においては、ステージIIからステージIVの患者群を100パーセント陽性と診断でき、ステージIの患者群においても95.1パーセントの極めて高い精度で陽性と診断することができた。

本研究により作成された診断モデルは、過去に類を見ない、極めて高い診断精度であり、かつその精度を血液からの情報のみで実現できたことは大変意義の大きい成果である。本研究成果を今後、前向きの臨床研究でさらに検証および最適化を重ねることで、卵巣がん検診確立の実現に向けて大きな前進が強く期待できる。血液検査による卵巣がん検診の確立は、卵巣がん診療にパラダイムシフトをもたらす試金石となり得るもので、その実現に向けて今後も研究を継続するという。
(Medister 2018年11月10日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 卵巣がんを早期から検出できる血液中マイクロRNAの組み合わせ診断モデル作成

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