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オメガ3系脂肪酸の摂取による不安症状の軽減をメタアナリシスで確認

国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター健康支援研究部長の松岡豊、蘇冠賓中國醫藥大學醫學院生物醫學研究所教授(台湾)、曾秉濤文信診所医師(台湾)らの共同研究グループは、青魚等に含まれるオメガ3系脂肪酸の抗不安効果を合計2,240人の不安症状を抱える人を対象とした19件の臨床研究をメタアナリシスで検討した。

不安症状は最も一般的にみられる精神症状であり、おおよそ3人に1人が生涯において何らかの不安症と診断されている。不安は生活の質や社会機能を低下させ、全死亡率を上昇させることにつながるものである。がん患者においても、約半数のがんサバイバーが中等度以上の、7%が重度のがん再発不安を抱えていることが様々な研究で示されており、サバイバーシップにおける未だ満たされていないニーズの一つであることが指摘されている。

不安症の治療法には選択的セロトニン再取り込み阻害薬や認知行動療法が用いられるが、前者は鎮静や依存などの副作用が懸念され、後者は治療にかかる時間、費用、そして治療者不足が課題となっている。身体疾患を抱える人の不安を和らげるための科学的根拠に基づく安全で簡便な対策が求められている。

代表的なオメガ3系脂肪酸には、植物由来のアルファリノレン酸、海洋由来のエイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸がある。近年、イワシ・サバ・サンマなど青魚に多く含まれるオメガ3系脂肪酸と不安の関連を調べる研究が多数行われ、オメガ3系脂肪酸の抗不安効果の検討が関心を集めている。一方で、これまで報告された臨床研究はサンプル数が少なく、研究によって結果のばらつきが大きく、オメガ3系脂肪酸が不安症状の軽減に効果があるかどうかについて明らかにされていなかった。

そこで、本研究では2018年3月4日までに公表された研究論文について、以下の基準で臨床試験19件を選定し、複数のランダム化比較試験によるエビデンスを統合し、関心のある治療薬・ケア・対策の効果の大きさを評価し、より高い見地から正しい結論を導き出すメタアナリシスで解析を行った。

その結果、オメガ3系脂肪酸の摂取により不安症状が軽減すること、また身体疾患や精神疾患等の臨床診断を抱えている場合にその効果が高いことが明らかにされた。今後は、海洋由来のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸、そして植物由来のアルファリノレン酸のいずれが、不安軽減に最も有効であるかを検討する研究も必要となる。がんサバイバーにおいても、がん再発不安と血中オメガ3系脂肪酸の関連を観察研究で確認することが必要とみられる。二者の間に関連が認められることが分かった場合、がんサバイバーにおける最大の満たされないニーズであるがん再発不安軽減を目的にしたオメガ3系脂肪酸による臨床試験を計画し、科学的根拠に基づく機能性食品開発につながることが期待される。さらに、オメガ3系脂肪酸の抗不安効果を探るメカニズム研究が進むことも期待できる。
(Medister 2018年10月6日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター がんサバイバーの再発不安を軽減する研究などへの応用を期待 オメガ3系脂肪酸の摂取による不安症状の軽減をメタアナリシスで確認

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