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日本人の肺腺がん約300例の全エクソン解析から間質性肺炎を合併した肺腺がんに特徴的な遺伝子変異を発見

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所ゲノム生物学研究分野の河野隆志分野長らは、国立大学法人東京医科歯科大学などと共同で、54例の間質性肺炎合併肺腺がんを含む日本人肺腺がん296例の全エクソン解析の結果から、肺サーファクタントシステム遺伝子群(Pulmonary Surfactant System Genes)が間質性肺炎合併肺腺がんに特徴的な遺伝子変異であること、またその変異を有する群では生命予後が不良であることを突き止めた。

間質性肺炎は肺胞構造の破壊と線維化をもたらす病気で、肺がんのリスクを高める重要な因子である。一般的な肺がんにおいては、発がんの原因となるドライバー遺伝子が多数同定されており、そのがん遺伝子に対する特異的分子標的薬が奏功することが知られている。しかし、間質性肺炎合併肺がんに特徴的ながん遺伝子異常や発がん機構については明らかにされていなかった。

このような背景から、研究グループは今回間質性肺炎合併肺腺がんに注目してゲノム網羅的な遺伝子変異の検出を行い、間質性肺炎合併肺腺がんに特徴的な遺伝子変異の解析を試みた。また、その変異について臨床情報を組み合わせることで遺伝子変異の意義について検討を行った。

研究グループは東京医科歯科大学と国立がん研究センター中央病院で肺腺がんと診断されて根治的手術を受けた患者から54例の間質性肺炎合併肺腺がんの患者試料を抽出し、既知のドライバー遺伝子異常がどのように分布しているのかについて解析した。また、間質性肺炎を有さない一般的肺腺がんの症例637例を比較対象として同様の解析を行った。その結果、がんの原因となるドライバー遺伝子の分布は間質性肺炎の有無によって大きく異なることが判明した。一般的肺腺がんでは、約70パーセントにEGFR等のドライバー遺伝子異常を認めたが、間質性肺炎合併肺腺がんでは約25パーセントにしかドライバー遺伝子異常は存在せず、これまでの研究では解明されていない発がん経路をたどっていることが判明した。

そこで、間質性肺炎合併肺線がん51例を含む肺腺がん296例の全エクソン解析でゲノム網羅的に遺伝子変異を検出するための解析を行ったところ、肺の発生や臓器としての働きを担うサーファクタントシステム遺伝子群の機能を失わせるような変異が、間質性肺炎合併肺腺がんに特徴的なゲノム異常であることが明らかになった。また、これらの遺伝子に異常がある症例では腫瘍組織が未成熟な傾向を示し、その生命予後が不良であった。

本研究から、間質性肺炎合併肺腺がんのゲノム異常の特徴が肺サーファクト遺伝子の機能を失わせるような変異であることが明らかなった。予後の改善のためには、新たな発がん機構の解明と更なる疾患特異的な治療を開発することが重要であり、その基礎的なデータとして本研究は多大なる貢献をすることが期待される。
(Medister 2018年9月3日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 新たな発がんメカニズムの解明やバイオマーカーとしての応用に期待 日本人の肺腺がん約300例の全エクソン解析から間質性肺炎を合併した肺腺がんに特徴的な遺伝子変異を発見

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