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粘液線維肉腫のゲノム・エピゲノム異常の全体像を解明

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野並びに希少がんセンターらの研究グループは、希少がんである粘液線維肉腫99例について、世界に先駆けて全エクソン解読、ターゲットシークエンス、全トランスクリプトーム(RNA)解読、DNAメチル化解析によるゲノム・エピゲノム統合的解析を行い、さらに米国TCGA(The Cancer Genome Atlas)のデータベースに登録されている粘液線維肉腫17例も加え、合計116例のデータを解析することで、体細胞レベルで起こる遺伝子異常(突然変異、遺伝子増幅、遺伝子欠損)・新たな融合遺伝子・DNAメチル化異常の全体像を解明した。

粘液線維肉腫は軟部組織(筋肉や脂肪組織)に発生する悪性腫瘍である軟部肉腫の一つである。かつて悪性線維性組織球腫の一亜型として扱われていたが、特徴的な臨床病理像から、2002年のWHO分類の改訂以来、明確に定義された独立した疾患概念として扱われるようになった。粘液線維肉腫は強い局所浸潤性を示し、その局所再発率は30%から59%と報告されている。化学療法や放射線治療には抵抗性であり、現状では、手術による完全切除以外に有効な治療法がない難治がんといえる。

本研究において、粘液線維肉腫ではp53経路および細胞周期関連遺伝子(G1期からS期への移行:いわゆるRB1経路)に高頻度に異常がみられ(66%)、これらの経路の調節異常が粘液線維肉腫の発生に深く関与していることを見出した。他にもATRX、 JAK1、NF1、NTRK1といった新規ドライバー変異やBRAFがん遺伝子を含む新規融合遺伝子SLC37A3–BRAF融合遺伝子を同定した。

さらに、DNAメチル化のパターンにもとづいて症例を分類したところ、粘液線維肉腫は3つのサブグル―プに分類され、これらのクラスターがドライバー遺伝子変異や生命予後、更に腫瘍内に浸潤する免疫細胞の特徴と関連していることを見出した。

粘液線維肉腫は肉腫の中でも薬剤抵抗性かつ難治性であり、これまで有効な薬物療法がないのが現状であったが、今回の研究では、治療標的となりうる遺伝子異常が37%の症例で見られることも明らかになった。本研究成果により、粘液線維肉腫において分子遺伝学的背景に基づいた個別化治療の開発と臨床現場への導入につながることが期待される。
(Medister 2018年8月14日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 希少がんの本態解明研究 粘液線維肉腫のゲノム・エピゲノム異常の全体像を解明

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