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更新日:2018/06/25

B型肝炎ウイルスによる新規の発がんメカニズムを解明

名古屋市立大学大学院医学研究科の田中靖人教授、林佐奈衣研究員は、Alaska Native Tribal Health ConsortiumのBrian J. McMahon教授らとの共同研究の成果として、B型肝炎ウイルス(HBV)の中でもアラスカで多く認められる遺伝子型のゲノタイプF1bに特異的なウイルス変異 (A2051C) がHBV感染粒子の産生を促し、若年肝がんの発症に関連していることを世界で初めて証明した。

B型肝炎ウイルスに感染したアラスカ原住民(モンゴロイド)の肝がん罹患率は年間で男性387/100,000人、女性63/100,000人であり、世界の肝がん罹患率(男性14.67/100,000人、女性4.92/100,000人) と比較し高頻度であることが問題視されてきた。2007年に共同研究者のMcMahon教授らのグループにより、①アラスカ原住民の肝がん発症はHBVゲノタイプFに持続感染した患者で多く認められること、②HBVゲノタイプFの肝がん発症年齢は22.5歳と、他のゲノタイプの60歳と比較して若年であることが報告されていた。日本を含むアジアでは、HBVゲノタイプ Ceがコアプロモーター変異を獲得することでHBV感染粒子の産生を促し、B型慢性肝炎患者の病態進展に関わることが多数報告されていたが、アラスカで蔓延するゲノタイプFの病原性や肝がん発症のメカニズムは明らかとなっていなかった。そこで、本研究では、ゲノタイプFに感染した若年の肝がん患者に見られる特異的なウイルス変異を同定し、その変異に伴うウイルス学的な特徴と肝がん発症メカニズムの解明を試みた。

2051変異は、これまでに肝がんとの関連が報告されていたコアプロモーター変異とともに、経時的に増加することが明らかになった。解析の結果、2051変異はHBV複製の場であるヌクレオカプシドを構成するコアたんぱく質の2量体形成を安定させ、HBV感染粒子の産生と放出を促進させることが分かった。

さらに、この2051変異ウイルスをヒト肝細胞をもつキメラマウスへ感染させたところ、早期にウイルス量が増加し、肝臓内で炎症性細胞の浸潤や線維化が認められ、mycをはじめとした複数のがん遺伝子が高発現することが明らかになった。以上の結果から、HBVゲノタイプF1bのコア2051変異が早期に病態を進展させ、若年の肝がん発症に関与する可能性が示唆された。

したがって、上述のコアたんぱく質の2量体形成を阻害することで、HBVの複製を抑えるだけでなく、線維化や肝がん発症を予防できる可能性があり、新規の分子標的治療薬の開発にもつながることが期待される。
(Medister 2018年6月25日 中立元樹)

<参考資料>
国立研究開発法人日本医療研究開発機構 B型肝炎ウイルスによる新規の発がんメカニズムを解明―若年肝がんの発症に関連!―

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