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B型肝炎ウイルスのゲノム組み込みとがん化の関連を解明

理化学研究所(理研)生命医科学研究センターがんゲノム研究チームの中川英刀チームリーダーと、広島大学大学院医歯薬保健学研究科消化器・代謝内科学の茶山一彰教授らの共同研究グループは、肝臓に感染したB型肝炎ウイルス(HBV)のゲノム解析を行い、HBVのヒトゲノムへの組み込み機序とウイルスによる発がん機構の一部を解明した。

B型肝炎ウイルス(HBV)は、全世界で約3億5,000万人以上が感染しているといわれ、そのうち日本では約130~150万人(約100人に1人)が感染していると推定されている。DNAウイルスであるHBVのゲノムは、全長が3,200塩基対程度の環状2本鎖DNAであり、6種類の遺伝子をコードしている。HBVが肝細胞に感染すると、そのDNAが細胞核に送り込まれ、HBVと肝細胞内のシステムを使って自己複製する。そして、このHBVのゲノムが肝細胞でのヒトゲノム(約30億塩基対)に組み込まれる現象が以前より分かっており注目されてきた。中川チームリーダーらはこれまで、次世代シーケンサー(NGS)を用い、ウイルス性肝臓がんを主とした全ゲノムシークエンスを行ってきた。これらの解析により、肝臓がんにおいてHBVや他のウイルスのヒトゲノムへの組み込み現象を検出している。このウイルスゲノムの組み込みにより、肝細胞内において、組み込み部位周辺のヒトゲノムが不安定となり、がん関連遺伝子の発現変化を引き起こし、肝臓がんの発生に寄与すると考えられている。

今回、共同研究グループは、HBV感染者の肝臓がんと隣接する肝臓組織、およびHBV感染マウスモデルから抽出したDNAについて、1,600カ所以上の組み込み部位を検出し詳しく解析した。その結果HBVゲノムが、マウスモデルでは感染早期の3~7週間で主にミトコンドリアゲノムに、ヒトの肝臓がんや隣接肝臓組織では1サンプルあたり1~279箇所も組み込まれていることが明らかになった。ゲノム組み込み部位は、クロマチンが開いている領域に多く、肝臓がんでは、特定のがん関連遺伝子に組み込こまれており、これががん化に寄与していると考えられた。さらに、HBVとヒトとの融合遺伝子の発現が確認され、これがHBVの感染成立やがん化と関連があるものと推測された。

HBV感染は、慢性の感染状態(慢性肝炎)の状態から、肝臓の線維化・肝硬変、そして肝がんの発生につながり、それらの治療法は限られている。本研究で得られたHBVのヒトゲノムへの組み込み機序の研究結果は、今後、B型肝炎から発生する肝臓がんの新規の治療薬・予防法、およびミトコンドリアに照準を絞った新しいウイルス治療薬の開発へ貢献することが期待できる。
(Medister 2018年6月21日 中立元樹)

<参考資料>
理化学研究所プレスリリース B型肝炎ウイルスのゲノム組み込みとがん化の関連を解明-B型肝炎や肝臓がんの新しい予防法・治療薬の開発に期待-

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