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日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業開始

株式会社LSIメディエンスと国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」の採択により、「がん医療推進のための日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業(以下、本事業)」を3月1日より開始した。

抗がん剤の開発は極めて難しく、動物実験で有効性が示されても、実際にヒトに投与する臨床試験では有効性が示されないことがある。実験に用いているがん細胞株は、元のがん組織の特性が失われているため、抗がん剤の正確な治療効果を予測できない可能性があるのだ。近年、国内においてもPDX(patient–derived xenograft)モデルの創薬利用が進み、PDXモデルを活用した研究開発の実績が出始めている。一方、PDXの樹立・品質保証・維持等には多額の費用が必要となり一企業での対応が困難なため、日本での産業利用を可能とする国レベルの体制整備が求められている。

PDXは、がん患者のがん組織を免疫不全マウスに移植し腫瘍を再現するものである。PDXは患者のがん組織の特徴を保持できるため、抗がん剤開発にパラダイムシフトを起こしている。従来の実験モデルで5%程度といわれる治療効果の予測能が、PDXモデルマウスの場合は80%以上という報告があり、新しい抗がん剤をヒトに投与する臨床試験の前に、薬剤の効果を予め確認するためにPDXモデルマウスの利用が進んでいるという。

本事業では、厚生労働大臣の定める基準に適合するGLP (Good laboratory practice)施設を擁しPDXの取り扱い実績のあるLSIメディエンス、世界に先駆けて重度複合免疫不全マウスを用いて多種多様なPDXの樹立に成功した実績と最先端創薬技術を保有する医薬基盤・健康・栄養研究所、2つの臨床研究中核病院と国内最大のがん専門研究所を擁する国立がん研究センターの3者が協働し、世界最高水準の日本人がん患者由来PDX(J-PDX)研究拠点の整備と当該分野の専門人材の育成を進めていく。具体的な目標としては、まず日本人のがん患者由来PDX(J-PDX)の産業利用に関する倫理的課題の解決することが挙げられる。次に、5大がん(肺がん、大腸がん、乳がん、胃がん、子宮がん)、前立腺がん、膵がん等の難治性がん、臨床試験が困難とされる希少がんを含む世界最高品質のJ-PDXライブラリーを整備する。また、J-PDXの樹立と使用に関する基準の作成を行い、GLP施設においてJ-PDXライブラリーの管理およびJ-PDXマウスを用いた薬事承認基準に準拠した非臨床試験を実施していく。さらに、PDXに関する基礎研究およびPDX樹立方法の高度化研究も進めて行く方針である。

本事業と並行して、国立がん研究センターは国内外製薬企業と連携し、がん患者とPDXマウスの薬剤応答性データ等を突合・解析するCo-Clinical Study並びに希少がんの創薬研究を実施する。医薬基盤・健康・栄養研究所は、世界最先端の創薬技術を用いて製薬企業を支援し、新たな創薬標的の探索とシーズ創生を行い、J-PDXライブラリーを用いる循環型研究開発を推進していく方針である。
(Medister 2018年3月19日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 抗がん剤開発の世界的パラダイムシフトへ対応 日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業開始 株式会社LSI メディエンスホームページ

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