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新規ADCを用いた子宮がん肉腫対象医師主導治験開始

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、代表的な希少がんの中でもさらに発症頻度の極めて少ない子宮がん肉腫を対象に、新規の抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate: ADC)DS-8201の医師主導治験(試験略称: NCCH1615、STATICE、UMIN試験ID: UMIN000029506)を開始した。本試験は当センターを含む全国7施設(国立がん研究センター中央病院、埼玉医科大学国際医療センター、静岡県立がんセンター、愛知県がんセンター中央病院、兵庫県立がんセンター、四国がんセンター、九州がんセンター)で実施する。

がんは粘膜や皮膚などの上皮性細胞から発生する悪性腫瘍であるのに対し、肉腫は筋肉や骨などの非上皮性細胞から発生する悪性腫瘍と定義されている。子宮がん肉腫は、「子宮体がん治療ガイドライン2013年版」では子宮体部悪性腫瘍の8%を占める子宮肉腫の一組織型とされ、子宮肉腫の約45%を占めるとされている。しかしながら、最近は子宮がん肉腫について、肉腫よりもがんの一組織型と考えることが主流となりつつあり、その疾患概念は未だ確立されていない。

また、こういった希少がんは患者数が少なく、背景情報が乏しいことや投資に見合った収益を承認後に得にくいこと等の理由から、製薬企業による新規治療薬の開発がなかなか進まない状況にある。この課題解決に向けて、国立がん研究センターでは希少がんを対象とした多くの医師主導治験を積極的に実施しているという。

子宮がん肉腫は、HER2タンパクが過剰発現していることが報告されており、国立がん研究センター中央病院で治療を実施した患者の腫瘍組織を用いてHER2タンパクの発現状況を調査したところ、HER2:3+と判定された患者が8.3%、HER2:2+と判定された患者が36%、HER2:1+と判定された患者が33%、HER2:陰性と判定された患者が23%であり、約半数の患者にHER2タンパクが過剰発現(HER2:2+以上)していることが確認された(ESMO 2016)。この結果をもとに、HER2タンパクを発現している子宮がん肉腫を対象として、開発中の新規治療薬であるDS-8201の有効性及び安全性を評価する医師主導治験を計画した。子宮がん肉腫に発現するHER2タンパクを標的とした分子標的薬としては世界初の医師主導治験となる。

本試験は、日本医療研究開発機構(AMED)臨床研究・治験推進研究事業「がん領域Clinical Innovation Network事業による超希少がんの臨床開発と基盤整備を行う総合研究(主任研究者:乳腺・腫瘍内科 米盛 勧)」の支援を受けて実施するもので、DS-8201については第一三共株式会社から治験薬として無償提供されるものである。

本試験を通じて、製薬企業、AMED、アカデミアの産官学連携を推進し、希少がんの新規治療開発体制を整備することで、わが国の希少がん領域における臨床開発の活性化に大きく貢献できるものと考えられる。
(Medister 2017年12月19日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 企業主導開発が困難な超希少がんの臨床試験計画や新薬開発手法の確立を目指す 新規ADCを用いた子宮がん肉腫対象医師主導治験開始

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