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胆道がんで世界横断的・最大の分子統合解析実施

国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)は、国際共同がんゲノムプロジェクト「国際がんゲノムコンソーシアム」(International Cancer Genome Consortium:ICGC, www.icgc.org)において、シンガポールのグループと共同で、世界10カ国から世界最大の総計489症例の胆道がん症例について分子データを集積し、統合的解析を行った。

胆道がん(肝内および肝外胆管がん、胆のうがんの総称)は、日本をはじめアジアに多いがんで、膵がんに次いで予後が不良(5年生存率は20%以下)な難治がんである。胆道がんは、胆石や胆嚢・胆管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性硬化性胆管炎、膵胆管合流異常症などの胆道系疾患にかかったことがある場合や、日本ではほとんどみられないが海外においては肝吸虫という寄生虫の感染により胆道がんのリスクが上昇することが知られている。しかし、こうした因子がどのようにがんを発症するのかに関する分子メカニズムは明らかになっていなかった。

がんはゲノム異常の蓄積によって発症・進展していく「遺伝子(ゲノム)の病気」であり、治療・診断・予防を考える上で個々のがんで起こっている遺伝子異常や分子異常の全体像を把握することは極めて重要である。とりわけEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子等といったがん発症の原因となるドライバー遺伝子異常を標的とした分子標的治療薬ががんの治療において有効であることが実証され、治療方針の決定にがんゲノム情報を活用した新しい医療体系である「ゲノム医療」ががん領域でも始まりつつあるのだ。更に現在非常に注目されている免疫チェックポイント阻害剤による治療においても、ゲノム変異情報は欠かせない。

国際共同がんゲノムプロジェクト「国際がんゲノムコンソーシアム」は、世界各国を通じて臨床的に重要ながんを選定し、国際協力で包括的かつ高解像度のゲノム解析を行い、がんのゲノム異常の包括的カタログを作成し、網羅的がんゲノム情報を研究者間で共有および無償で公開することでがんの研究および治療を推進することを目的に2008年に発足した。現在、17か国が参画し73のがん種についての大規模ゲノム研究プロジェクトが精力的に遂行されている。

国がんは、国際がんゲノムコンソーシアムにおいて、胆道がんの解析を担当している日本並びにシンガポールの共同研究として、世界10カ国(日本・シンガポール・タイ・中国・台湾・韓国・ルーマニア・イタリア・フランス・ブラジル)から収集された世界最大の胆道がん総計489症例について、ゲノム・エピゲノム・遺伝子発現に関する包括的なシークエンス解析を行った。その結果、新規のものも含め胆道がんにおけるゲノム異常を網羅的に同定し、また得られた分子データを基に検討を行い、生命予後と有意に相関する4つの分子タイプグループに分類できること、さらに各タイプに特徴的な治療標的分子を発見した。これによりグループごとに治療法を最適化していくことが必要であることが示唆された。また、これまで明らかとなっていなかった胆道がん発症の分子メカニズムについて、2つの発症メカニズムを同定することに成功した。

本研究成果により、胆道がんのゲノム・分子異常の解明が大きく前進し、遅れていた胆道がんのゲノム医療の促進に貢献することが期待されるであろう 。
(Medister 2017年8月28日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 胆道がんで世界横断的・最大の分子統合解析実施 ゲノム・分子異常解明が大きく前進、ゲノム医療促進を期待

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