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膵臓がんリスク疾患・早期膵臓がんの新検診法開発目指し新たなバイオマーカーでの実験的検診を鹿児島県で実施

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所早期診断バイオマーカー開発部門の本田一文ユニット長らの研究チームは、膵臓がん(以下、膵がん)を引き起こす可能性の高い疾患(慢性膵炎・膵管内乳頭粘液性腫瘍など)及び早期の膵がんを効率的に発見する検診法の開発を目指し、新しい血液バイオマーカーを用いた試験的膵がん検診の検証を行う臨床研究を2017年7月より鹿児島県で行われる地域健康診断で実施する。

膵がんは、早期発見が難しい難治がんである。検診での採血による効率的な検診法を確立できれば、膵がんによる死亡率の低下が期待できる。国立がん研究センターでは、膵がんのリスク疾患や膵がんを早期発見するための血液を用いた指標(バイオマーカー)の開発に挑戦している。

このバイオマーカーは、血液中の「アポリポプロテインA2(apoA2)アイソフォーム」というタンパク質で、当研究所や米国国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)との共同研究において、膵がんを引き起こす可能性の高い疾患や早期の膵がんを検出することの有効性が評価され、検査キットも開発されている。この研究成果を踏まえ、2015年から神戸大学などと共同で膵がん検診研究を試行し、バイオマーカーの異常があった被験者から、膵がんのリスク疾患や膵がんを発見できることを確認している。しかしながら、先行研究では血液バイオマーカー検査で陽性反応が見られても、被験者の希望でその後の精密検査を実施していたこともあり、精密検査を受けられる被験者が少ないなど、バイオマーカーの有用性を科学的に証明するのに必要なデータを確保できていなかった。

今回の研究では、参加する被験者には、血液によるバイオマーカー検査と、バイオマーカー陽性者にはその後の画像検査(造影CT検査)による精密検査をセットで受けさせるという。登録の目標は5,000人から10,000人である。

検査の実施方法の概略としては、まず検診での採血7mLを用い、1次ふるいわけ検査(1次スクリーニング検査)として血液中のアポリポプロテインA2アイソフォームの濃度バランスを計測する。血液検査結果は被験者に知らせて、異常値がみられた被験者には鹿児島大学、鹿児島市立病院、出水市総合医療センターのいずれかで、精密検査(2次検査)として造影CT検査を受けさせる。そして、血液検査陽性者(1次スクリーニング検査陽性者)の中から、どれくらいの頻度で膵がんのリスク疾患や早期膵がんが見つかるのか、その検出率(陽性反応適中率)を調べる方針である。

今回の臨床研究を鹿児島県で行うのは、鹿児島県民総合保健センター(日本対がん協会鹿児島支部)が、精密検査受診率が高いなど検診体制が整っているためである。今秋以降、鹿児島県以外にも臨床研究地域をさらに拡大する予定だという。
(Medister 2017年7月3日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 膵臓がんリスク疾患・早期膵臓がんの新検診法開発目指し新たなバイオマーカーでの実験的検診を鹿児島県で実施

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