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がん免疫療法の誕生 科学者25人の物語

『がん免疫療法の誕生 科学者25人の物語』書評

著者:Neil Canavan/監修・翻訳:河本 宏/翻訳:三枝 小夜子
出版社:メディカルサイエンスインターナショナル
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抗がん剤や放射線ではなく、人体がもともともっている免疫細胞に注目してがんを治療する「免疫療法」が、新たながん治療になるのではないかと注目されています。本書は、免疫療法の実現を目指して研究を続けている25人の科学者にインタビューを行い、研究内容だけでなく科学者の人となりも描いたものです。

免疫チェックポイント阻害薬誕生のエピソード

本書は25人の科学者が紹介されていますが、それぞれのエピソードは独立しており、どこから読んでもよいようになっています。一つあたり10ページ前後なので、隙間時間にさっと読むにも適しています。

もともとはアメリカで出版されたものを翻訳したものですが、日本人科学者へのインタビューも2本掲載されています。一人は、2018年ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑教授(京都大学)、もう一人は坂口志文特任教授(大阪大学)です。

そこでまずはセクション2「PD-1」、第4章の本庶佑教授から読むことをおすすめします。内容は、免疫細胞のブレーキ役となっている「PD-1」という物質に関係するものです。2018年ノーベル生理学・医学賞の受賞テーマそのものなので、ニュースなどで見聞きした人も多いと思われ、読みやすいのではないでしょうか。続く第5章と第6章は、PD-1に結合する物質を発見した科学者、これらに注目した臨床研究を主導した科学者の物語です。

そのあと、セクション1「CTLA-4」を読むのがよいでしょう。第1章は、本庶教授と同じく2018年ノーベル生理学・医学賞を受賞したジェームズ・アリソン教授(MDアンダーソンがんセンター)、続く第2章と第3章はアリソン教授が発見したCTLA-4に関連する内容です。

セクション1と2は、免疫療法の中でも「免疫チェックポイント阻害療法」と呼ばれているもので、現在日本でも保険診療として認められています(対象となるがんの種類によります)。さまざまなメディアで取り上げられているので、比較的読みやすいエピソードとなっています。

科学者が研究に打ち込む姿に心熱くなる

他のセクションのほとんどは、基礎研究もしくは臨床試験が進行中のものです。有効性や安全性が確認されておらず、実現するかどうかわからないものとなっています。がんの患者さんの中には、もどかしいと感じてしまう方がいるのかもしれませんが、このような研究や試験が行われていると知るには十分まとまっている内容です。

この中で優先的に読んでもらいたいものを挙げるなら、第10章と第20章です。第10章のラルフ・スタインマン氏は、25人の中で唯一存命していませんが、免疫細胞の一種である「樹状細胞」を発見したとして2011年ノーベル生理学・医学賞を受賞した科学者です。しかし、賞の発表時にはすでに亡くなっていたという点でも話題になりました。そのときの経緯が、スタインマン氏の同僚と娘によって語られています。

第20章は、日本人の坂口特任教授です。免疫細胞の中でも、アレルギーなどの過剰な反応を防ぐ「制御性T細胞」を発見した科学者で、いずれはノーベル賞を受賞するのではないかと期待されているほどです。もちろん、制御性T細胞に限らず、本書で紹介されている研究が実用化されれば、「人類ががんを克服する」という壮大な目標に大きく貢献することは言うまでもありません。

本書は一般向けの内容とはいえ、一部には生物学の知識が必要な箇所があります。しかしながら、すべてを正確に理解できなくても、科学者が研究に打ち込む姿に心熱くなることでしょう。

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