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「がん」はなぜできるのか そのメカニズムからゲノム医療まで

『「がん」はなぜできるのか そのメカニズムからゲノム医療まで』書評

編集:国立がん研究センター研究所
出版社:講談社
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「がんとは何か?」「がんはどうしてできるのか?」「がんはどうして転移するのか?」――今やがんは誰もが知っている病気となりましたが、これらの疑問に答えるのは専門家でも難しいようです。それでも、長年にわたる研究によってわかってきたこと、そこから私たち一人ひとりにできることを詳細に、正確に記したのが本書です。

がんの予防・早期発見

編者に国立がん研究センター研究所を迎えた本書はブルーバックスシリーズらしく、主に科学的(生物学的)な視点から最先端の研究の紹介を交えつつ、がんを知ることが目的です。前書きでは「がんを知ることにより、がん対策の重要な柱となっている『がんの予防・早期発見』『がんの効果的な治療』、さらには、『がんと共生すること』が可能となると考えています」と述べます。本書では特に予防・早期発見と治療について書かれています。

がんの予防と早期発見については、6章の「がんを見つける、見極める」と、7章の「予防できるのか?」に書かれています。「がんを見つける、見極める」では、早期発見はやはり重要としながらも、現在のがん検診で行われる内視鏡検査やマンモグラフィは苦痛などの問題が残っていると指摘。また、がんの治療効果を見るための血液検査では「腫瘍マーカー」という物質の数値を見るのですが、がんが小さいうちは検出が難しかったり、正常細胞からも分泌されたりするため、早期発見には活用できません。

そこで国立がん研究センター中央病院は2017年から「1滴の血液から、13種類のがんを超早期に発見する技術の実用化」を目指した臨床研究を開始しました。この研究では、がん細胞が他の細胞にはたらきかけるときに使われる「マイクロRNA」という物質を調べます。人間には2500種類のマイクロRNAがあり、そのうち100種類ががんの診断に使えるのではないかと考えられています。採血だけなので苦痛はほとんどないことも特徴です。実用化にはまだ時間がかかりますが、期待できるものです。
「予防できるのか?」については、日本人の統計データから、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの健康管理により、がんのリスクがほぼ半分になると推計されています。「節酒」とは、1日あたりビール大瓶で1本程度まで。「食生活」とは、塩分を控え、野菜と果物を積極的に食べ、熱いものは少し冷めてから摂ること。「身体活動」とは、運動をすること。そして「適正体重の維持」とは、男性ではBMIを21~27、女性では21~25の範囲におさめるような体重管理のことです。これらは個人の努力でできることなので、ぜひ意識して取り組んでみましょう。

将来のがん治療とは

「がんの効果的な治療」では、1~5章、そして8章の内容につながります。治療法を知るためには、まずがんができるメカニズムを理解するところから始まります。がん細胞は、一部の遺伝子が変化することで生まれます。その遺伝子が何をしていて、なぜがん形成に関わるのかについて、最先端の研究でもすべてが解明されているわけではありません。しかし最近では、遺伝子を調べる機器の性能が上がっており、遺伝子が変わった場所によってがんを分類できるようになりつつあります。現在はがんができた場所(臓器)によって抗がん剤などを使い分けていますが、将来はがんで変化した遺伝子ごとに使い分ける時代になるだろうと思われます。

また、手術、抗がん剤、放射線に続く第4の治療法として注目されている免疫チェックポイント阻害剤(商品名「オプジーボ」など)や、まだ小規模の臨床研究段階ですが、患者の免疫細胞を取り出して遺伝子組換えを施し、がん細胞を攻撃する能力をもたせて血中に戻す「CAR-T療法」なども紹介されています。これらの研究を通じて、がんはいつか制圧できると期待させてくれる一冊です。

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