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国立がん研究センターのこころと苦痛の本

『国立がん研究センターのこころと苦痛の本』書評

監修:清水 研/里見 絵理子/若尾 文彦
出版社: 小学館
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がんは深刻な「心の危機」でもある――本書はこの一文から始まります。本書が紹介するデータによると、がん患者さんの悩みや負担について、身体の苦痛や暮らしの苦痛よりも心の苦痛が最も多いということです。心の苦痛にはどのようなものがあるか、その測り方、伝え方、そして和らげる方法を紹介するのが本書です。

心の苦痛を測る、伝える


「がんだと告知されたときのショックが大きすぎて立ち直れない、自分は弱い人間かもしれない」「がんの治療には副作用など辛いこともあるけど、我慢しなければいけない」。もしそう思っているのなら考え直してほしいと、本書では訴えています。

確かに、自分にがんがあると知ったときのショックは大きく、家事や仕事に手がつかないという患者は少なくありません。しかしそれは、自分が弱いからではなく、人間として「自然な反応」であると、本書では述べています。また、副作用の苦痛を我慢することについては、医学的なメリットは何もなく、むしろ心にとって大きな負担です。

本書では、「強い心の苦痛は自分らしい正常な判断力を損なうため、治療に差しさわる」として、我慢するのではなく治療すべきと主張します。しかし、心の苦痛を客観的に検査する方法はほとんどなく、むしろ軽視されがちです。実際、担当医による抑うつの評価よりも、患者さん本人の抑うつの程度が重い傾向にあるというデータも紹介されています。つまり、患者さん本人が苦痛を訴えることが大切となります。

心の苦痛の測り方として、気分にあらわれるもの、体にあらわれるものについてのチェックリストが本書にあります。「つらさと支障の寒暖計」という測り方も紹介されています。その結果をもとに、担当医や看護師に伝えましょう。もし、担当医や看護師に相談しにくいときには、がん相談支援センターに相談するという方法もあります。

また、心のケアの専門家として、精神腫瘍医と精神科医が紹介されています。彼らは専門的な訓練と研究を通じて、患者さんや家族が抱えがちな不安や苦痛を熟知した存在です。話すだけでも楽になったという患者さんも多いとのことなので、強い心の苦痛を感じているときは受診してみましょう。

本書には、実例として合計28例が掲載されています。家族や周囲の人との関係についての悩み、医師や看護師に関する悩み、そして死を意識することについて、などが紹介されています。いずれも程度の差はあるものの、多くの患者さんが経験することと思います。心の悩みにただ一つの正解はなく、本人の正確や状況によって解決策は変わりますが、どれも参考になることでしょう。

間違った情報や誤解を正したい


本書を監修した国立がん研究センターのスタッフの思いとしてあるのは、「正しい情報を届けたい」という点です。間違った情報や、誤解されていることについて丁寧に解説し、患者さんの力になりたいということが伝わってきます。

例えば、「緩和ケア」と聞くと、治る見込みのない終末期に受けるものという印象があるのかもしれません。しかし実際には、病気に伴う心と体の痛みを和らげる治療であり、がんと診断されたときから受けてもよいものなのです。痛みを和らげることで治療に対して前向きになれるからです。他にも、医療用麻薬への誤解についても述べています。

心の悩みや痛みは、自分から言い出さないとなかなか解決しにくい問題です。本書は、その解決を手助けしてくれる味方となることでしょう。

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