更新日:2026/10/01
プラチナ製剤が効きにくくなった再発卵巣がんに、抗体薬物複合体「エラヒア」が国内承認――FRα陽性が対象、投与の前後に眼科の検査が必要
武田薬品工業は2026年9月16日、抗体薬物複合体(ADC)「エラヒア点滴静注100mg」(一般名:ミルベツキシマブ ソラブタンシン)が国内で製造販売承認を受けたと発表した※1※2。対象は、がん細胞の表面にある葉酸受容体α(FRα)が陽性で、白金系抗がん剤(プラチナ製剤)が効きにくくなった再発卵巣がんである。同じ日に厚生労働省は、失明に至るおそれのある眼の副作用に注意するよう求める通知を出した※3。当編集部は承認申請の段階を9月6日の記事で伝えており、今回はその続報となる。
発表のポイント
• 2026年9月16日に承認された。希少疾病用医薬品に指定された、新しい有効成分の薬である※1
• 根拠となった試験の一つ、海外第3相MIRASOL試験(453人)では、医師が選んだ抗がん剤1剤と比べて、全生存期間の中央値が16.46か月対12.75か月と長かった※4
• 眼の副作用について警告があり、投与前に眼科医の診察を受け、投与中も定期的に眼の検査を受けることが求められている※3
概要
エラヒアは、FRαに結合する抗体に、細胞の分裂を妨げる薬(DM4)をつないだ薬である※2。FRαを目印にがん細胞に取り込まれ、細胞の中で放出された薬ががんの増殖を抑えるとされる※2。「プラチナ製剤抵抗性」とは、プラチナ製剤の最後の投与から6か月未満で再発した状態を指す※2。
承認は、海外第3相のMIRASOL試験とSORAYA試験、国内第1/2相のTAK-853-1501試験の結果に基づく※2。MIRASOL試験の対象は、1〜3種類の治療歴があり、がん細胞の75%以上でFRαが一定以上の強さで染まる高異型度漿液性卵巣がんの人である※4。エラヒア群227人と抗がん剤群226人を比べると、がんが進行せずに過ごせた期間(無増悪生存期間)の中央値は5.62か月対3.98か月、がんが一定以上小さくなった人の割合は42.3%対15.9%だった※4。死亡のハザード比は0.67だった※4。グレード3以上の有害事象は41.7%対54.1%、有害事象で治療をやめた人は9.2%対15.9%で、いずれもエラヒア群のほうが少なかった※4。国内試験の第2相部分でも、海外の試験と同様の有効性と安全性が示されたと報告されている※2。
厚労省の通知によると、この薬では視力の低下を伴う角膜障害などの眼障害が起こり、失明に至る可能性がある※3。そのため眼科医と連携して使い、投与前に眼科医の診察を行い、投与中も視力検査などの眼科検査を定期的に行うことが定められた※3。投与中は人工涙液を使うよう指導すること、コンタクトレンズを避けることも注意事項に含まれている※3。
この記事の読者にとっての意味
関係する人:プラチナ製剤を含む治療のあとに再発した卵巣がんの患者さんとその家族。対象はFRα陽性の場合に限られる※1。試験では、検査でFRαが多く出ていることを確かめた人が参加した※2。
今すぐ使えるか:国内で承認された薬である※1。ただし承認の発表では、発売の時期は示されていない※2。同じ日には、プラチナ製剤抵抗性の再発卵巣がんに対するキイトルーダの効能追加も承認されており※1、9月28日の記事で伝えている。
主治医に確認するとすれば:「自分のがんがFRα陽性かどうかを調べられるか」「眼科の診察や検査をどこで、どのくらいの間隔で受けることになるか」「今の治療の選択肢の中で、この薬はどう位置づけられるか」といった点が論点になりうる。
卵巣がんの基本はこちら:卵巣がん
(Medister編集部 2026年10月1日)
本記事は2026年10月1日時点の公的機関の情報および原著論文をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
記載の数値は臨床試験に参加した集団の値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 医薬品医療機器総合機構「承認品目一覧(新医薬品)」(2026年9月16日承認 No.17)(最終確認日: 2026年10月1日)
- 武田薬品工業「エラヒア(ミルベツキシマブ ソラブタンシン)の日本における製造販売承認取得について」(2026年9月16日)(最終確認日: 2026年10月1日)
- 厚生労働省「ミルベツキシマブ ソラブタンシン(遺伝子組換え)製剤の使用に当たっての留意事項について」(医薬薬審発0916第7号・医薬安発0916第2号、2026年9月16日。日本眼科学会掲載)(最終確認日: 2026年10月1日)
- Moore KN, et al. N Engl J Med. 2023;389(23):2162-2174(MIRASOL). DOI: 10.1056/NEJMoa2309169, PMID: 38055253(最終確認日: 2026年10月1日)


















