更新日:2026/09/30
直腸がんの開腹手術後の癒着、粉末型の癒着防止材で93%から45%に――国内53施設のランダム化試験、12月に保険適用予定
国立がん研究センター中央病院などのグループは、直腸がんの開腹手術でおなかを閉じる直前に粉末型の癒着防止材「SI-449」をまくと、手術後の癒着が起きた人の割合が93%から45%に下がったとする臨床試験の結果を、2026年8月26日に米国の外科学誌JAMA Surgeryで発表した※1※2。SI-449は「シーエスバリア」の名で2026年4月に医療機器として国内承認を受けており※3、9月16日の中医協の資料では12月1日に保険適用となる予定とされた※4。ただし、癒着が減ったことで腸閉塞などの合併症まで減るかは、まだ確かめられていない※1。
発表のポイント
• 国内53施設のランダム化比較試験。直腸がんの開腹手術で一時的な人工肛門をつくった人を、SI-449をまく群とまかない群に分けた※1※2
• 人工肛門を閉じる2回目の手術で調べると、癒着があったのはまいた群で58人中26人(45%)、まかなかった群で60人中56人(93%)だった※2
• 重い癒着は5%対28%。SI-449と因果関係のある有害事象は認められなかった※1
概要
術後癒着とは、手術で傷ついた臓器や組織が、治っていく過程で周りの組織とくっついてしまうことをいう。腸閉塞や長引く腹痛の原因になり、次の手術では癒着をはがす手間とリスクが増える※1。手術の最後に癒着防止材を使うことがあるが、従来のシート型やスプレー型は、凹凸のある面や狭い場所には使いにくいという課題があった※1。
SI-449は、体内にもある成分のコンドロイチン硫酸を加工した粉末で、水分を吸って膨らみ、傷の表面と周りの組織のあいだで壁の役割を果たす※2※3。
試験は2020年9月〜2023年6月に行われ、131人が登録された※2。対象は、直腸がんの開腹手術で一時的な人工肛門をつくり、後日それを閉じる手術を受ける予定の人である※1。この2回目の手術の際に、1回目の手術の切開創の下にできた癒着を観察し、どちらの群かを知らされていない中央の委員会が判定した※2。癒着が切開創の3分の2以上に広がっていた人は22%対66%で、範囲も小さかった※1。
この試験は、開発企業の生化学工業が行った治験である※1。
この記事の読者にとっての意味
関係する人:おなかや骨盤の手術を受ける予定の人とその家族。試験で確かめられたのは、直腸がんの開腹手術である※1。承認された使用目的は、おなかや骨盤の手術での癒着の頻度・範囲・程度の軽減で※4、腹腔鏡手術やロボット支援手術での効果はこの試験では調べていない※1。
今すぐ使えるか:国内で承認済みの医療機器で、12月1日に保険適用となる予定である※4。発売時期は、保険の価格が決まった後に知らせるとされていた※3。SI-449はがんそのものを治療するものではなく、手術後の合併症を減らすための材料である。癒着が減ることで腸閉塞や痛みが実際に減るかは、長期の検証が必要とされている※1。
主治医に確認するとすれば:「自分の手術で癒着防止材を使うか、使うならどの種類か」「手術後の腸閉塞のリスクはどの程度か」といった点が論点になりうる。
大腸がんの基本的な情報はこちら:大腸がん
がんの治療法の全体像はこちら:がんの治療方法について
(Medister編集部 2026年9月30日)
本記事は2026年9月30日時点の公的機関の情報および原著論文をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
記載の数値は臨床試験に参加した集団の値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 国立がん研究センター「直腸がんの術後癒着抑制に粉末型癒着防止材SI-449が有効であることを確認」(2026年9月29日)(最終確認日: 2026年9月30日)
- Kanemitsu Y, et al. JAMA Surg. 2026(オンライン先行). DOI: 10.1001/jamasurg.2026.3416, PMID: 42647025(最終確認日: 2026年9月30日)
- 生化学工業「癒着防止材SI-449の日本における製造販売承認の取得と販売提携先の決定に関するお知らせ」(2026年4月22日)(最終確認日: 2026年9月30日)
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(2026年9月16日)資料「医療機器の保険適用について(令和8年12月1日収載予定)」(最終確認日: 2026年9月30日)


















