更新日:2026/09/23
血液で再発の兆候を捉える「MRD」——国立がん研究センター東病院が固形がん治療開発の新たな枠組みを提唱(研究段階)
手術で取りきれたはずのがんが、血液中にわずかに残るがん由来のDNAとして検出できる——この「分子遺残病変(MRD)」を軸に、固形がんの新しい治療開発の進め方を、国立がん研究センター東病院の研究グループが提唱した。2026年9月15日に発表され、考え方は国際学術誌「Cancer Cell」に掲載された※1※2。血液検査(リキッドバイオプシー)で画像検査では分からない再発リスクを早期にとらえ、より効率的に新しい治療を検証する枠組みだが、現時点では概念的な提言の段階であり、確立には10年程度かかると見込まれている※1。
発表のポイント
• 血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA)を測ってがんの残存(MRD)を評価し、複数の臨床試験のデータを束ねた「MRDレジストリ」を外部対照として活用する※1
• 患者数に応じて「標準的なランダム化比較試験」「ハイブリッド型」「レジストリで補強した単群試験」を使い分ける三段階の試験デザインを提案した※1
• ctDNAが消える「クリアランス」と、残り続ける「持続陽性」の2つに分けて、治療効果を早期に評価する考え方を示した※1
概要
リキッドバイオプシーは、血液に含まれる微量のがん由来DNA(ctDNA)などを調べる検査で、体への負担が少ない採血だけで、画像検査では捉えきれない再発の兆候を早期に把握できる可能性がある。手術後にこのctDNAが検出される状態は、目に見えないがんが残っている(MRDがある)ことを示すと考えられ、再発リスクが高いことが知られてきた。研究グループ(吉野孝之・院長特任補佐 兼 国際臨床腫瘍科長、小林信・肝胆膵外科医長 兼 周術期治療開発推進室長ら)は、こうしたMRDの情報を治療開発の中心に据え、少ない患者数でも効率よく新しい治療を検証できる枠組みを提唱した。これは特定の治療法や検査を今日から使えるようにするものではなく、今後の開発の進め方についての「概念的提言」であり、確立には長期の取り組みが必要とされる。実際に、大腸がんを対象に、根治切除後の経過観察中にctDNAが検出されたものの画像検査では再発が確認されていない患者を対象とする「ALTAIR試験」などの臨床試験が進んでいる※1。詳しい提言内容は2026年に Cancer Cell に報告された※2。
この記事の読者にとっての意味
この発表は、今すぐ受けられる新しい検査や治療の登場を告げるものではありません。関わってくるのは、将来的に「手術後に血液検査で再発リスクを見極め、必要な人にだけ追加の治療を行う」という医療が実現していく道筋です。なお、ctDNAを調べるがん遺伝子検査そのものは、進行・再発した固形がんで薬を選ぶ目的などに限り、一部が保険診療として行われています(→がん遺伝子パネル検査)。一方で、今回想定されている「根治手術後のMRD評価にもとづく治療の上乗せ」は、まだ臨床試験の段階です。手術後の再発が心配な場合は、主治医に「自分の場合に再発リスクを調べる検査や参加できる臨床試験の選択肢があるか」を尋ねてみるとよいでしょう。がんの再発・転移の仕組みはがんの再発と転移はなぜ起こる?、再発予防の考え方はがん再発予防の記事もあわせてご覧ください。
(Medister編集部 2026年9月23日)
本記事は2026年9月23日時点の公的機関の情報および学術論文をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。ここで紹介した枠組みは研究段階のものであり、確立された治療法・検査法ではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。


















