更新日:2026/09/21
トリプルネガティブ乳がん一次治療にADC「ダトロウェイ」が日本で承認——免疫療法が使えない患者を対象に化学療法より生存期間が延長
2026年9月16日、第一三共株式会社は、抗体薬物複合体(ADC)「ダトロウェイ点滴静注用100mg」(一般名: ダトポタマブ デルクステカン)について、日本においてトリプルネガティブ乳がん(ホルモン受容体陰性・HER2陰性)の手術不能または再発例を対象とした承認の一部変更を取得したと発表した※1。対象は、免疫療法(PD-1/PD-L1阻害薬)の適応とならない、未治療の転移性または局所再発の進行例に限られる。承認の根拠となった国際共同第3相試験TROPION-Breast02(n=644)では、化学療法と比較してPFS・OSの両方で統計的な有意差が認められた※2。なお同じ2026年9月16日のプレスリリースで、エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)とペルツズマブを組み合わせたHER2陽性転移乳がん一次治療についても別途承認が取得されている※1。
発表のポイント
• 対象はPD-1/PD-L1阻害薬が使えない未治療の進行・再発トリプルネガティブ乳がん患者。日本で2026年9月16日に製造販売承認事項一部変更承認を取得※1
• TROPION-Breast02試験(第3相、n=644)で、PFS中央値10.8か月 vs 化学療法5.6か月、OS中央値23.7か月 vs 18.7か月——いずれも統計的有意差あり※2
• 承認済みだが保険適用(薬価収載)の時期は今後の手続きを待つ必要があり、現時点では保険診療として使用できる時期は未定
概要
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、ホルモン受容体とHER2のいずれも陰性の乳がんで、全乳がんの約15%を占める※1。ホルモン療法もHER2標的療法も使えないため、進行例では化学療法が主な選択肢だった。トリプルネガティブ乳がんは進行が早いサブタイプとされ、5年生存率は約15%との報告がある※1。
ダトロウェイはADC(抗体薬物複合体)だ。ADCとはがん細胞の標的タンパク質(TROP-2)を認識する抗体に抗がん薬を結合させ、がん細胞に選択的に薬物を届けるよう設計された薬剤である。
TROPION-Breast02試験は免疫療法非適応の未治療進行TNBC患者644例を対象とした無作為化・非盲検・国際第3相試験(登録: 2022年5月〜2024年6月)で、ダトロウェイ群(323例)と化学療法群(321例)に1対1で割り付けた※2。
主要評価項目のPFS中央値はダトロウェイ10.8か月(95%CI: 8.6〜13.0)vs 化学療法5.6か月(95%CI: 5.0〜7.0)、ハザード比0.57(99%CI: 0.44〜0.73、P<0.0001)。OS中央値はダトロウェイ23.7か月(95%CI: 19.8〜25.6)vs 化学療法18.7か月(95%CI: 16.0〜21.8)、ハザード比0.79(95.01%CI: 0.64〜0.98、P=0.029)と、両評価項目で統計的有意差が示された※2。グレード3以上の治療関連有害事象はダトロウェイ群33%、化学療法群29%。治療中止率はそれぞれ4%・7%で、両群とも治療関連死なし※2。
この記事の読者にとっての意味
今回の承認が関係するのは、ホルモン受容体陰性・HER2陰性(トリプルネガティブ)と診断されており、免疫療法(PD-1/PD-L1阻害薬)が使えないと主治医に判断されている、転移・再発後の一次治療をこれから始める患者さんだ。PD-L1陽性で免疫療法が使える患者さんとは対象が異なるため、自分がどちらに当てはまるかは主治医への確認が必要になる。
2026年9月16日に日本で製造販売承認を取得しており、治験段階ではない。ただし第一三共のプレスリリースに薬価収載(保険適用)の時期の記載はなく、収載後にはじめて保険診療として使用できる。使用開始の時期については今後の薬価収載を待つ必要がある。
主治医に確認するとしたら、「自分のがんがこの承認対象に当てはまるか」「薬価収載はいつ頃になりそうか」「起こりうる副作用とその管理についてどう備えるか」といった点が手がかりになりうる。試験で示されたOS中央値の差(約5か月)は集団の統計値であり、個々の患者さんの予後を示すものではない。
乳がん全般の情報は乳がんのページで、がん治療の種類についてはがんの治療方法についてのページで詳しく説明している。
(Medister編集部 2026年9月21日)
本記事は2026年9月21日時点の公的機関の情報および企業の発表・診療ガイドライン・原著論文をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。記載の生存期間は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 第一三共株式会社「抗悪性腫瘍剤『エンハーツ』と『ダトロウェイ』の日本における転移性乳がん一次治療に係る2つの一部変更承認取得のお知らせ」(最終確認日: 2026年9月21日)
- Dent R, et al. Datopotamab deruxtecan in patients with untreated, advanced triple-negative breast cancer (TROPION-Breast02): a randomised, open-label, international, phase III trial. Ann Oncol. 2026;37(8):1066-1080. DOI: 10.1016/j.annonc.2026.03.008 / PMID: 41937088(最終確認日: 2026年9月21日)


















