更新日:2026/09/19
腎盂・尿管がんの術後、抗がん剤の1回膀注で膀胱内再発を抑制――第3相JCOG1403試験
腎盂・尿管にできた上部尿路がん(腎盂・尿管がん)の手術後に、抗がん剤ピラルビシンを1回だけ膀胱内に注入しておくと、その後の膀胱内でのがん再発を抑えられることが、国内44施設による第3相ランダム化比較試験(JCOG1403)で示された。国立がん研究センターと東北大学らが2026年9月18日に発表し、成果は医学誌The Lancet Oncologyに2026年7月に掲載された。手術後24時間以内の1回の注入で、3年時点の無再発生存割合が47.0%から60.0%へと改善した。
発表のポイント
• 上部尿路がん(腎盂・尿管がん)の腎尿管全摘除術の後、24時間以内にピラルビシン30mgを1回だけ膀胱内に注入する群(153例)と、注入せず経過観察する群(151例)を比べる第3相試験※1
• 主要評価項目の無再発生存期間が延長。3年無再発生存割合は注入群60.0%、経過観察群47.0%、ハザード比0.67(90.96%信頼区間0.50〜0.88)、p=0.0066※1
• 重い有害事象(Grade3〜4)は血尿が注入群で4例(3%)、経過観察群では0例。治療に関連した重篤な有害事象や死亡はみられなかった※1
概要
JCOG1403は、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)泌尿器科腫瘍グループの44施設が参加した、多施設・非盲検・ランダム化の第3相試験である※1※2。対象は、これまで治療を受けていない臨床病期0a〜III期(cTa〜T3N0M0)の上部尿路がんで、全身状態が保たれた20〜80歳の患者さんである。上部尿路がんは腎盂や尿管の内側をおおう「尿路上皮」から生じるがんで、膀胱がんと同じ尿路上皮がんに分類され、手術後に膀胱内へ再発しやすいことが知られている。
2016年10月から2020年6月にかけて352人が登録され、腎尿管全摘除術を受けた348人のうち304人が、手術後にピラルビシン注入群(153例)と経過観察群(151例)へ1対1で割り付けられた。ピラルビシンは国内で使われているアントラサイクリン系の抗がん剤で、本試験では手術後24時間以内に30mgを膀胱内へ1回注入した。病理でpT3/T4またはリンパ節転移が確認された患者さんには、別途、補助化学療法が行われた※1。
追跡期間の中央値は4.3年で、主要評価項目である無再発生存期間(再発や死亡が起きるまでの期間)は注入群で有意に延長した。3年無再発生存割合は注入群60.0%(95%信頼区間51.7〜67.3)、経過観察群47.0%(同38.7〜54.9)で、ハザード比は0.67(90.96%信頼区間0.50〜0.88、p=0.0066)だった。安全性の面では、最も多かったGrade3〜4の有害事象は血尿で、注入群4例(3%)、経過観察群0例にとどまり、治療関連の重篤な有害事象・死亡は認められなかった。研究チームは、この1回の膀胱内注入が上部尿路がん術後の「新たな標準治療の一つ」になりうると結論づけている※1※2。
この記事の読者にとっての意味
この試験の対象は、腎盂・尿管にできた上部尿路がんに対して腎尿管全摘除術(腎臓と尿管を摘出する手術)を受ける患者さんである。上部尿路がんは手術後に膀胱へ再発することが少なくないため、その予防が長年の課題だった。今回、既に国内で使われている抗がん剤を手術直後に1回入れておくという簡便な方法で、再発を抑えられることが日本人を主体とした試験で示された点に意味がある。
今すぐ使えるか:ピラルビシンは国内で承認・流通している薬剤で、膀胱がんに対する膀胱内注入という使い方は既に認められている。一方、今回示された「腎盂・尿管がんの術後に膀胱内再発を防ぐ目的で使う」という設定は、この試験によって有用性の証拠が得られた段階であり、診療ガイドラインへの反映が期待される。実際に受けられるか、保険上どう扱われるかは施設や状況により異なるため、主治医への確認が必要である。
主治医に確認するとすれば:「自分の病期や手術内容でこの膀胱内注入が適応になるか」「注入を行う場合の副作用(血尿など)の見込みと対処」「注入を行う・行わないそれぞれの場合の、その後の膀胱内再発をみるための検査スケジュール」といった点が論点になりうる。
腎盂・尿管がんについてはこちら:腎盂尿管がん
再発しやすい膀胱がんについてはこちら:膀胱がん
(Medister編集部 2026年9月19日)
本記事は2026年9月19日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
記載の数値は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。


















